なぜ血糖値を“気にする”時代なのか?
血糖値が高くなると、体内でさまざまな問題が起きます。 糖尿病のリスクはもちろんのこと、脳・心臓・腎臓など、あらゆる臓器に影響し、最終的には失明や足の切断といった深刻な合併症にもつながりかねません。
さらに現代人は、炭水化物を多く摂取しやすい食生活や、運動不足、ストレス、睡眠の質の低下といった複合的な要因によって、知らず知らずのうちに「血糖値スパイク」を起こしているケースが増えています。
だからこそ、今、誰もが血糖値を気にする時代になってきました。 ただし、現在の血糖測定は採血やセンサー装着など、手間やコスト、抵抗感があるものも多く、日常的なモニタリングには向きません。

「もっと手軽に、血糖値が“見える”ようになれば…」 そんな思いが、この研究の出発点です。
試行錯誤でたどり着いた「血糖値推測の平均誤差11.26%」の数式とは?
血糖値の測定を、侵襲的(体に針を刺したり、血を採ったりしない)な方法で簡単に行えないか?
そんな思いから始まったこの研究。出発点は非常にシンプルで、健康診断で誰もが測る血圧と脈拍という手がかりを使って、血糖値を予測する数式を作れないかというものでした。(詳しくはPart1,Part2で紹介)
最初のモデルでは、線形回帰を使って脈圧や心拍出量などの「血行動態パラメータ」から血糖値を単純に予測。しかし当然、そんなに甘くありませんでした。誤差は平均で20%以上、誤差50%以上のケースも多発。研究は「やっぱり無理かもしれない…」という諦め感に包まれました。
血行動態からAIモデルへ:「数式の迷宮」へ突入
しかし私たちはあきらめませんでした。次に試したのが、AIを駆使して、ランダムフォレストや線形回帰とのアンサンブル(融合)による予測方法を使い、特徴量もET(大動脈弁開放時間)、RRav(平均心拍周期)、CO(心拍出量)、META(代謝係数)などを増やし、徐々に精度を上げていきました。
ただし、ここでもまた壁にぶつかります。平均誤差は下がっても、最大誤差が100%を超えるというケースも出てきました。「血糖値が倍も外れるって、もう科学ではなく、占いだよね…」という笑い話にさえなりました。
「血糖値120を境にグループを分ける」方法をテスト
突破口になったのが、「実測血糖値120mg/dLを境に、2つのモデルを分ける」という発想でした。正常~軽度高血糖の人と、糖尿病リスクが高い人では血管の反応や代謝の仕方が違う。だったら、別々のモデルで学習した方が正確なのでは? という考えに至ったのです。
このグループ分離のアイデアに加えて、さらに特徴量選択にElasticNet、補正係数(CF)による高血糖補正、そしてランダムフォレストと線形回帰の融合まで加えて、ようやく1つの「形」が見えてきました。
精度55%超、誤差30%以上はわずか4%台に!
そしてほぼ完成した数式がこちら:
- モデル:ランダムフォレスト(60%)+ 線形回帰(40%)の融合
- グループ:実測血糖値 < 120とそれ以上でモデルを切り替え
- 特徴量:BPW, RRav, META, ET, CO
- 高血糖補正:Q3分位点(75%)より上なら最大1.3倍の補正
この最終モデルによる推定結果はこうなりました:
誤差評価(最終計算式に基づく結果) | |
指標 | 結果 |
平均誤差 | 11.26% |
誤差5%未満の割合 | 28.74% |
誤差10%未満の割合 | 55.38% |
誤差20%以上の割合 | 14.80% |
誤差30%以上の割合 | 4.82% |
誤差50%以上の割合 | 0.55% |
下記は、3817人の計算データから頭のNo.1~20および最後のNo.3817~3800の実測血糖値と推定値の比較です:

半数以上が誤差10%以内という高精度予測を実現でき、なおかつ誤差30%以上の外れ値は全体の5%未満に抑えられました。
血糖値が「見える」時代、何が変わるのか?
もし、血圧を測るだけで血糖値がわかるようになったら、健康へのアプローチはどう変わるでしょうか?
まずは日々の食事。これまでは「血糖値が高いかもしれない」と不安を感じつつも、実際に測ることなくスルーしていた人たちが、より明確な判断基準を得ることになります。今日の血糖値が高ければ、夜の食事は糖質を控えよう。逆に安定していれば、安心してデザートを楽しめるかもしれません。
次に、糖質制限やダイエットの指導にも変革が起こるでしょう。これまでは一律に「炭水化物は控えめに」と言っていた指導が、個々の血糖反応に応じて調整される時代が来るかもしれません。
つまり、血糖値の可視化が「自分の体のクセを知る」ことにつながり、よりパーソナライズされた健康管理が可能になるのです。
この技術を一緒に育ててくれるパートナーを募集しています
この研究はまだ完成ではありません。しかし、ここまでの成果は、非侵襲的な血糖モニタリング技術として実用化の大きな一歩となるものでした。今後、スマートウォッチや体組成計との連携、健康食品との連携、企業の健康経営プログラム、生活習慣病予防アプリへの実装など、あらゆる活用の可能性があります。
現在、この技術をともに育て、社会に広めてくれる協業・支援パートナー企業を募集しています。
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Part4では、今回の血糖値推測数式を使って、実際に血圧計と血糖値を図り、その数値をこの数式に当てはめてその誤差を確認する作業の結果をレポートします。まだ、100人程度の実測値を集めて、この数式の精度を改めて検証したいと考えています。
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