赤ちゃんが眠っていると、「ちゃんと呼吸しているかな」と、胸の動きを何度も確認してしまうことはありませんか。
特に新生児の時期は、静かに眠っているだけでも心配になり、夜中に何度もベビーベッドをのぞき込むというお母さんも少なくありません。
以前であれば、こうした不安に対する「新しい見守り方法」がベビーセンサーでした。しかし2026年現在、ベビーセンサーそのものは珍しい育児用品ではなくなっています。保育施設でも午睡センサーの導入が進み、こども家庭庁の調査資料では導入率19.4%とされています。2026年度も午睡センサーなど、安全対策に役立つ機器への導入支援が続いています。こども家庭庁
だからこそ、これから大切なのは「ベビーセンサーを使うか」ではありません。
「そのセンサーは、赤ちゃんの何を見ているのか」です。

同じベビーセンサーでも、見ているものはまったく違う
市販されているベビーセンサーには、泣き声を検知するもの、カメラで寝姿を映すもの、身体に装着して動きを測るもの、マットレスの下から体動を検知するものなどがあります。
どれも「見守り」を目的としていますが、得意分野は同じではありません。
泣き声を知らせるセンサーは、赤ちゃんが泣いたことには気づけます。カメラなら、離れた場所から寝姿を見ることができます。
しかし、赤ちゃんが静かに眠っているときの「呼吸に伴うわずかな身体の動き」は、音や一般的な映像だけでは捉えにくい場合があります。
赤ちゃんの呼吸を見守りたいのであれば、重要なのは「呼吸そのものを直接測っているか」というより、呼吸によって胸や腹部に生じる非常に小さな動きを、どこまで継続して捉えられるかです。
実際、寝具に伝わる微細な圧力変化から乳児の呼吸数を非接触で推定する研究は以前から行われており、2025年にも早産児を対象とした圧力センサーによる呼吸検出の研究が報告されています。一方で、体位や身体の動き、センサー位置によって精度が変化することも確認されています。つまり「マット型なら何でも同じ」ではありません。
呼吸の「回数」だけではなく、変化を見続ける
新生児の呼吸は大人のように一定ではありません。
そのため、ある瞬間の数字だけを見て「正常」「異常」と判断することはできません。家庭用の見守り機器も、病気を診断する医療機器の代わりにはなりません。
それでも、普段の呼吸に伴う体動を継続的に捉えていれば、「いつもと違う変化」に気づくための材料になります。
ここが、高性能な体動センサーを使う大きな意味です。
お母さんが一晩中赤ちゃんの胸を見続けることはできません。センサーは人の代わりになるものではありませんが、人が見ていない時間にも同じ方式で測定を続けられます。
見守りに求めたいのは、「安心という言葉」ではなく、「何をセンシングしているのか」という技術的な裏付けなのです。
保育園で使われるIBUKI ONEが見ているもの
その考え方を分かりやすくした製品の一つが、体動センサ「IBUKI ONE」です。
IBUKI ONEは布団やマットレスの下に設置し、赤ちゃんの身体に機器を付けず、呼吸に伴う体動を捉えます。呼吸体動数が低下した場合や、一定時間検知されない場合に音で知らせる仕組みで、一般医療機器クラスⅠとして届出されています。保育園では、iPad対応のアプリと組み合わせ、複数の園児の呼吸体動や午睡記録を確認できます。
体動センサIBUKI ONE | 株式会社リキッド・デザイン・システムズ
保育施設への導入実績も積み重ねられており、保育士の目視確認を置き換えるのではなく、「人の目+センサー」という二重の見守りを支える補助ツールとして利用されています。
この考え方は家庭でも同じです。
「センサーがあるから見なくてよい」ではなく、「直接確認することに加えて、眠っている間の変化をもう一つの方法でも見ている」。
その使い方が、安心感につながります。
IBUKIを支えるのは、空気のわずかな変化を捉える技術
さらに興味深いのは、その背景にあるセンシング技術です。
リキッド・デザイン・システムズが開発した「LDS-T6B」は、非常に小さな空気圧の変化を電気信号として捉える高感度な空気動圧センサーです。
測定帯域は0.15Hz~1kHz。人の耳では音として認識しにくい低周波領域を含め、呼吸や心拍に伴う微弱な変化から、より速い振動まで幅広く捉える設計になっています。
ポイントは、「赤ちゃんが動いたか、動かなかったか」だけを見る単純なスイッチではないことです。
赤ちゃんが呼吸すると、胸や腹部の動きが寝具へ伝わり、そのわずかな圧力変化が空気を通じてセンサーへ届きます。その微細な波形を捉える技術が、ベビーセンサーや介護見守り、睡眠解析などに応用されています。関連するVitalセンサー技術は2025年に特許第7710729号として登録されています。

赤ちゃんの呼吸だけを測れるセンサーだから高性能、ではない
LDS-T6B空気動圧センサーの特徴を知ると、センサーの考え方がさらに分かりやすくなります。
このセンサーは、呼吸や心拍に伴う微細な変化だけを検知する専用センサーではありません。空気の非常に小さな動きを捉えるため、人が部屋を歩いたときや、ドアを開閉したときに発生する空気圧の変化まで波形として観測できます。
2026年に一般住宅で行われた初期実験でも、人の通過、スライドドア、玄関ドアの開閉時には、何も起きていない状態とは異なる波形が確認されています。
もちろん、ベビーセンサーとして使用するときに「ドアの開閉を測る」という意味ではありません。
ここで重要なのは、赤ちゃんの呼吸のような非常に小さな変化まで拾うためには、それだけ微弱な空気・圧力変化を捉えられるセンシング性能が必要だということです。
この「小さな変化を見る力」が、センサー性能を考える一つのポイントになります。
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高性能なセンサーでも、赤ちゃんの安全を任せきりにはしない
ここは非常に重要な点です。
ベビーセンサーはSIDSを予防する機器ではなく、赤ちゃんの病気を診断するものでもありません。IBUKI ONEも、計測値は推計であり、保育士や保護者の確認を置き換える製品ではないことを明記しています。
こども家庭庁も、1歳まではあおむけに寝かせること、硬く平坦な寝具を使うこと、寝床にぬいぐるみやタオルなどを置かないこと、掛け布団ではなく衣類や空調で温度調整することなどを勧めています。2024年には55人の乳児がSIDSで亡くなっており、安全な睡眠環境そのものを整えることが基本です。赤ちゃんが安全に眠れるように ~1歳未満の赤ちゃんを育てるみなさまへ~|こども家庭庁
センサーは、その基本の上に追加する「もう一つの見守り」です。
新生児のお母さんに知ってほしい、これからのベビーセンサーの選び方
ベビーセンサーを選ぶとき、価格やスマホアプリの見た目だけで決める必要はありません。
見るべきなのは、「何を検知しているか」「身体に装着する必要があるか」「寝具の下から呼吸に伴う微細な体動を捉えられるか」「検知できなくなった場合に知らせる仕組みがあるか」「実際の保育・医療・介護などの現場で使われてきたセンシング技術なのか」といった部分です。
赤ちゃんが眠っている静かな夜。
何度もベッドをのぞき込み、「ちゃんと呼吸しているかな」と確認したくなる気持ちは、センサーだけで完全になくなるものではありません。
しかし、赤ちゃんの呼吸に伴うごく小さな動きを、人の目とは別の方法で継続して見守ることができれば、お母さんにとって一つの安心材料になります。
2026年のベビーセンサー選びは、「付けるか、付けないか」の時代から、「どんな技術で赤ちゃんを見守るか」を選ぶ時代へ変わっています。
赤ちゃんの小さな呼吸を、より確かな方法でもう一つ見守る。
それが、これからのベビーセンサーに求められる役割ではないでしょうか。
IBUKI ONEの詳細:https://liquiddesign.co.jp/technology-line/ibuki-plus/

