2025年12月8日23時15分頃、青森県東方沖を震源とするマグニチュード7.5〜7.6規模の地震が発生しました。青森県八戸市では最大震度6強を観測し、太平洋沿岸には津波警報・注意報が出されました。多くの方にとって、不安の大きい夜だったと思います。

この記事では、この地震について、高島式地震予知がどのような解析を行い、どこで判断を誤ったのかを、論理的に整理します。また、その後に再開した仙台観測所の前兆波解析についても、12月の解析結果としてお伝えします。

今回の地震についての率直な結論

最初に結論をお知らせします。
今回の青森県東方沖地震について、高島式地震予知は事前に正しい予測を出すことができませんでした。結果として、予知は外れています。この点について、弁解をするつもりはありません。まず「外れた」という事実を正面から受け止めることが出発点だと考えています。

実は11月2日に前兆波は観測されていました

ただし、後からデータを整理し直した結果、この地震に対応すると考えられる前兆波は、11月2日にすでに観測されていたことが分かりました。

この日に観測されたのが、第3波と第4波と呼ばれる2つの前兆波です。

・8時30分の第3波
 持続時間82秒、主な周波数は13.3Hzと10.2Hz、最大振幅146mVp-p

・13時54分の第4波
 持続時間59秒、主な周波数は13.1Hzと10.1Hz、最大振幅181mVp-p

2つを合わせると、合計141秒という比較的長い前兆波でした。周波数の特徴も非常によく似ており、同じ地震活動に関係する信号だと判断できる内容でした。

なぜ「埼玉の震度3地震」という判断になったのか

当時の解析では、これらの前兆波を「関東地方の内陸で、マグニチュード4前後の地震が起きる可能性がある」と判断しました。具体的には、埼玉県南部直下、震度2〜3程度という予測です。結果から見れば、この判断は誤りでした。では、なぜこのような判断になったのか。ここを冷静に整理することが重要です。

青森県東方沖M7.6の11/2発生の前兆波によって太平洋プレートが移動して、同時に関東フラグメント上の埼玉県南部の鈴谷付近の地下も動きました。その影響で埼玉県・鈴谷では直下地震の前兆波として検出されましたが、この地の震度は3は予想通り的中していました。

判断を誤らせた一番の要因

最大の要因は、観測体制の欠落です。11月2日の時点で、仙台に設置されている前兆波の観測装置が故障しており、稼働していませんでした。そのため、埼玉・鈴谷という限られた地点のデータだけをもとに解析を行うことになりました。高島式地震予知では、本来、複数の観測点のデータを突き合わせることで、地震の規模や震源の広がりを判断します。観測点が1か所欠けるだけで、情報の見え方は大きく変わります。今回の解析では、その状態で判断を下してしまったことが、結果的に誤りにつながりました。

後から分かったこと

後日の解析では、11月2日の前兆波は、約1か月後に発生した青森県東方沖のマグニチュード7クラスの地震に対応していた可能性が高いと考えられています。「後から見ればつながっていた」と言えますが、当時はその判断に必要な情報がそろっていませんでした。この点について、高島自身も、判断が誤っていたことを認めています。

仙台観測所の復旧と12月の前兆波

その後、仙台観測所は復旧し、12月から再び前兆波の観測が可能になりました。復旧後の解析として、12月10日に2つの前兆波が観測されています。

➀ 12/10 16時54分  (添付)5~25Hzフィルタ通過波形

持続時間45秒  f=11.5Hz,    10.0Hz     Max37mvp-p

② 12/10 17時24分  (添付)5~25Hzフィルタ通過波形

持続時間33秒  f=11.1Hz,    10.1Hz     Max32mvp-p

総持続時間78秒  地震発生予想日は12/17±5日(発生確率は80%) 

震源地は仙台より150km以内  M3~4  仙台の揺れは震度1程度

これらのデータから想定される地震は、仙台から150km以内、マグニチュード3〜4程度と考えられます。仙台周辺で感じる揺れは、あっても震度1程度と見込まれています。発生の目安は12月17日を中心とした前後5日で、確率は約80%です。

今回の結果から何を学ぶのか

今回の青森県東方沖地震は、高島式地震予知にとって、非常に重い検証材料になりました。重要なのは、「予知が外れた理由」を技術のせいにしないことです。今回の問題点は明確です。
・ 仙台観測所が稼働していなかったこと
・ 限られた情報だけで、人が判断してしまったこと

地震予知は、最終的に人間が判断します。だからこそ、判断の材料となる情報がどれだけそろっているかが、精度を大きく左右します。

最後に

高島式地震予知は万能ではありません。今回のように判断を誤ることもあります。ただ、それはこの取り組みをやめる理由ではなく、どうすれば判断ミスを減らせるのかを考え続ける理由だと受け止めています。

今回の解析を通して改めて分かったのは、前兆波という現象そのものよりも、それをどう読み取り、どう判断するかが結果を大きく左右するという現実です。観測点が十分に機能していること、複数の情報を同時に確認できること、そのうえで慎重に判断すること。その一つでも欠けると、精度は簡単に揺らいでしまいます。

高島式地震予知は、20数年にわたり試行錯誤を重ねながら続けてきた研究です。今回の結果も含めて、すべてをデータとして蓄積し、同じ判断ミスを繰り返さないための材料にしていきたいと考えています。そのためには、観測体制を安定して維持し、より多くの地点で継続的にデータを集めていくことが欠かせません。

この取り組みは、一人や一組織だけで完結できるものではありません。観測への協力や、研究を継続するための支援をしてくださるパートナーの存在が不可欠です。高島式地震予知の考え方や、今回のような真摯な検証姿勢に少しでも関心を持っていただけた方がいらっしゃいましたら、ぜひ当社までご連絡ください(下記お問い合わせフォーム)。多くの方と協力しながら、少しでも判断精度を高め、防災に役立つ研究として前に進めていきたいと考えています。

【関連リンク】
◎ 高島式地震予知の解説記事一覧:https://liquiddesign.co.jp/category/blog/earthquake/
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