地震は、数字だけで語られると現実味が薄くなります。

「M7.2」「最大震度6強」「30年以内の発生確率60~90%程度以上」と聞いても、自分の生活にどこまで関係するのか、すぐには想像しにくいかもしれません。

しかし、最近の大きな地震を振り返ると、地震が起きた瞬間に失われるのは建物だけではありません。交通、観光、仕事、家族との連絡、日常の買い物、そして「今日も普通に過ごせる」という安心そのものが、一瞬で崩れます。

2024年の能登半島地震では、輪島市の朝市通り周辺で大規模火災が発生しました。消防庁の資料でも、地震の影響により電気に起因した火災が発生した可能性があると整理されています。地震の怖さは、揺れそのものだけではありません。揺れた後に火災が広がり、道路が寸断され、助けが届きにくくなることまで含めて災害です。

さらに、2025年のミャンマー地震では、震源から遠く離れたタイ・バンコクでも建設中の高層ビルが崩壊し、多くの人が巻き込まれました。ロイターは、この地震によりミャンマーで建物やインフラが広範囲に被害を受け、隣国タイのバンコクでも建設中の高層ビルが崩壊したと報じています。つまり、大地震の影響は震源地だけで完結しません。都市機能、建設現場、交通、観光、経済活動まで一気に止める力があります。

日本でも、南海トラフ地震への警戒が高まっただけで、社会は大きく動きました。2024年8月に南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」が発表された際、高知県内の宿泊施設では約9456人分のキャンセルが発生し、損失は1億4300万円以上と報じられています。実際に巨大地震が起きていなくても、「起きるかもしれない」という情報だけで、観光、移動、経済活動は大きな影響を受けるのです。

そして、南海トラフ地震は決して遠い未来の話ではありません。地震調査研究推進本部は、南海トラフ地震の今後30年以内の発生確率について「60~90%程度以上」と評価しています。内閣府の最新想定でも、最大クラスの地震・津波が発生した場合、最悪のケースで死者数は約29.8万人、全壊焼失棟数は約235万棟、資産等の被害は約224.9兆円とされています。

そのような中、6月後半の日本列島では、再び強い地震活動が続きました。

6月16日には茨城県南部でM5.5、最大震度5弱の地震が発生しました。6月25日には岩手県沖でM7.2の地震が発生し、青森県で最大震度6強を観測しました。さらに6月26日には山梨県東部・富士五湖でM5.6、最大震度6弱の地震が発生しています。

大きな地震が続いた直後だからこそ、私たちは「次はどこで起きるのか」だけでなく、「小さな異常をどう捉え、防災行動につなげるのか」を考える必要があります。

6月28日から7月6日の埼玉県・鈴谷観測結果

6月28日から7月6日にかけて、埼玉県南部の鈴谷観測点では、新たな地震前兆波が観測されました。今回の解析期間中、6月29日、6月30日、7月3日に合計4個の前兆波が確認されています。

1つ目は、6月29日14時57分に観測された前兆波です。持続時間は46秒、周波数は12.1Hzと10.0Hz、最大振幅は52mVp-pでした。

この波形に対する地震発生予想日は7月6日±5日、発生確率は80%、震源地は鈴谷より150km以上、規模はM4クラスと推定されています。鈴谷での揺れは震度2程度と見込まれています。

この前兆波は、持続時間としては比較的短いものの、明確な波形変化を伴っている点が特徴です。震源が鈴谷から150km以上と推定されているため、関東近郊だけでなく、やや離れた地域で発生するM4クラスの地震に対応する可能性があります。

2つ目は、6月30日9時8分に観測された前兆波です。総持続時間は118秒、周波数は11.9Hzと9.6Hz、最大振幅は161mVp-pでした。

今回の観測データの中では、最大振幅が最も大きい波形です。地震発生予想日は7月7日±5日、発生確率は80%、震源地は鈴谷より150km以内、規模はM4クラスと推定されています。鈴谷での揺れは震度3程度と見込まれています。

3つ目は、7月3日10時13分に観測された前兆波です。持続時間は79秒、周波数は13.5Hzと9.8Hz、最大振幅は42mVp-pでした。

地震発生予想日は7月10日±5日、発生確率は80%、震源地は鈴谷より150km以内、規模はM4クラスと推定されています。鈴谷での揺れは震度1~2程度と見込まれています。

今回の観測から見えること

今回の観測で注目すべき点は、前兆波が1回だけではなく、数日の間に複数回観測されていることです。

6月29日、6月30日、7月3日という流れを見ると、地中の応力変化が一度で終わったのではなく、数日にわたって断続的に変化している可能性があります。特に6月30日の前兆波は、総持続時間118秒、最大振幅161mVp-pと大きく、鈴谷から150km以内のM4クラス、鈴谷で震度3程度という推定が出ています。

ここで重要なのは、「M4クラスだから大丈夫」と単純に考えないことです。

M4クラスの地震そのものは、巨大地震ではありません。しかし、都市部や住宅密集地に近い場所、地盤の弱い場所、夜間や通勤時間帯に発生すれば、体感としては十分に不安を感じる揺れになります。家具の固定が甘ければ物が落ち、エレベーターが止まり、電車の運行確認が必要になることもあります。地震の影響は、マグニチュードの数字だけで決まるわけではありません。

能登半島地震でも、被害を大きくしたのは揺れだけではありませんでした。火災、道路寸断、通信障害、孤立、避難生活の長期化が重なり、被災地の生活を大きく変えました。バンコクの高層ビル崩壊も同じです。震源から遠くても、地盤、建物、都市構造によって被害は変わります。

つまり、前兆波を観測する意味は「地震を当てること」だけではありません。

大切なのは、地震の可能性が高まっている期間を知ることで、防災行動を前倒しできることです。水や食料を確認する。スマートフォンの充電をする。家具の転倒防止を確認する。避難経路を家族で共有する。会社であれば、従業員の安否確認方法や停電時の対応を再確認する。これらは、地震が起きてからでは遅い行動です。

南海トラフ地震臨時情報の発表時に宿泊キャンセルや交通への影響が出たように、地震リスクは実際の揺れより先に社会を動かします。だからこそ、観測データを「不安を煽る情報」としてではなく、「備えを始めるきっかけ」として使うことが重要です。

今回の鈴谷観測点のデータでは、6月30日の波形が最も強く、7月7日±5日を中心とする期間に注意が必要と解析されています。さらに7月3日の波形は、7月10日±5日を中心とする期間を示しています。これらを合わせると、7月前半は関東周辺、または鈴谷から150km圏内外の地域で、M4クラスの地震に注意すべき期間と考えられます。

ただし、今回の解析結果は「必ず地震が発生する」と断定するものではありません。地震予知は現在の科学において確立された技術ではなく、観測結果と実際の地震を照合しながら検証を重ねる段階にあります。

だからこそ、当たったか外れたかだけで終わらせるのではなく、どの波形がどの地震に対応した可能性があるのか、どの推定がずれたのか、どの期間に観測できなかったのかを記録し続ける必要があります。

地震予知を防災に役立てるために

南海トラフ地震のような巨大地震は、発生してから対応するのでは間に合いません。

重要なのは、平時から観測を続け、小さな異常や前兆的な変化を記録し、防災に活かせる情報へと変えていくことです。

高島式地震予知が目指しているのは、地震を単に「言い当てる」ことではありません。観測データを蓄積し、実際の地震と照合しながら、少しでも早い備えにつながる情報を提供することです。今回の6月28日から7月6日の解析データも、その継続的な検証の一部です。

地震は止められません。しかし、備える時間を少しでも増やすことはできます。

能登半島地震のように、元日の穏やかな時間が一瞬で災害に変わることがあります。ミャンマー地震のように、遠く離れた都市で建物が崩れることもあります。南海トラフ地震臨時情報のように、実際に巨大地震が起きていなくても、社会や経済が大きく動くこともあります。

だからこそ、前兆波の観測は「研究者だけのもの」ではなく、地域防災、企業のBCP、家庭の備えに接続していく必要があります。

地震予知活動へのご協力をお願いします

現在、高島式地震予知研究会と株式会社リキッド・デザイン・システムズでは、この活動を支えてくださる協力者を募集しています。

観測場所の提供、測定機器の設置や保守への協力、データ解析、情報発信、企業や自治体との共同研究、実証実験など、ご協力いただける内容はさまざまです。

地震予知は、一朝一夕で完成する技術ではありません。観測を続け、データを積み重ね、実際の地震と照合し、失敗も含めて検証することで、初めて防災に役立つ技術へ近づいていきます。

この活動に共感していただける方がいらっしゃいましたら、ぜひご協力いただければ幸いです。

高島式地震予知に関するお問い合わせ先
info@liquiddesign.co.jp

技術提供、共同研究、実証実験、観測協力のご相談を受け付けています。

【関連リンク】

◎ 高島式地震予知の解説記事一覧
https://liquiddesign.co.jp/category/blog/earthquake/

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