首都直下地震について、「切迫している」という記事を目にする機会が増えています。
2021年に公開された「まぐまぐニュース!」の記事では、首都直下地震の経済被害を約95兆円、南関東で発生するM7程度の地震の確率を30年以内に70%程度と紹介していました。また、東京に集中する行政・経済機能を分散する必要性も指摘しています。
その後、政府は2025年12月に首都直下地震の被害想定を約10年ぶりに更新しました。本記事では、最新の政府想定と「30年以内70%」の意味を整理したうえで、2026年7月21日~26日に実施した高島式地震予知の観測結果を紹介します。

※本画像は、政府が公表した被害想定の数値を基に作成したイメージです
最新の被害想定は95.3兆円から82.6兆円へ
政府は2025年12月、都心南部直下地震を対象とした新たな被害想定を公表しました。
| 項目 | 2013年想定 | 2025年最新想定 |
| 死者 | 最大約2万3,000人 | 最大約1万8,000人 |
| 全壊・焼失建物 | 最大約61万棟 | 最大約40万棟 |
| 経済的被害 | 約95.3兆円 | 約82.6兆円 |
| 避難者 | 最大約720万人 | 最大約480万人 |
| 帰宅困難者 | 最大約800万人 | 最大約840万人 |
建物の耐震化や出火防止対策の進展を反映し、直接死と建物被害は2013年想定より減少しました。
それでも、建物倒壊や火災などによる死者は最大約1万8,000人、全壊・焼失建物は最大約40万棟に上ります。さらに、避難生活の長期化や医療・介護の中断などによる災害関連死は、過去の災害実績を基に約1万6,000~4万1,000人と試算されています。これは確定的な予測ではなく、条件によって大きく変わる推計です。
経済被害は、建物や設備などの被害約45.1兆円と、生産・サービス低下による影響約37.5兆円を合わせて約82.6兆円です。企業撤退やデータ喪失、信用低下など、金額に含まれていない影響もあります。
停電、通信障害、交通網の寸断、燃料不足、物流停止が重なれば、建物被害の少ない地域でも生活や企業活動が長期間止まる可能性があります。
「30年以内70%」は何を意味するのか
地震調査研究推進本部は、南関東地域の直下でプレートの沈み込みに伴って発生するM6.7~M7.3程度の地震について、今後30年以内の発生確率を70%程度と評価しています。
これは、都心南部直下地震だけが70%の確率で発生するという意味ではありません。また、「今年中に発生する確率が70%」という短期予測でもありません。過去の地震活動などを基に、30年間という長期の危険度を示した数字です。現在の科学では、この長期評価から発生日や震源を具体的に決めることはできません。
2021年の記事と最新の政府想定を比較
参考記事が紹介した「約95兆円」「30年以内70%」は、当時の政府資料に基づく数字です。ただし、経済被害は2025年の見直しで約82.6兆円に更新されました。
また、「首都直下地震が切迫している」という表現には注意が必要です。長期評価で危険度が高いことと、発生日が間近に迫っていることは同じではありません。
記事が提案する首都機能の分散は地震予測ではなく、被災後も行政や経済を維持するための危機管理策です。政府の最新想定でも、通信、物流、行政、企業活動の継続が課題として挙げられています。
高島式地震予知では何を見ているのか
政府の長期評価が数十年単位の発生確率を示すのに対し、高島式地震予知は、地震前の現象と関係する可能性がある微細な振動信号を観測対象としています。この信号を、高島式では「破壊核形成信号」と呼んでいます。
観測には、部屋の共振周波数を利用して、地面から建物へ伝わる微振動を増幅する方式を採用しています。この仕組みについては特許を取得しています。
一方、高島式地震予知は、一般の地震学で確立された短期予知技術ではありません。特許取得も予測精度を認定するものではないため、観測結果を事前に記録し、実際の地震との一致例、不一致例、信号を検出できなかった事例を含めて検証を続けています。
7月21日~26日は前兆波を観測せず
2026年7月21日から26日まで、埼玉県南部の鈴谷観測点では、高島式地震予知が対象とする前兆波は観測されませんでした。同じ期間、富山県東部でも対象信号は確認されていません。
これは、各観測点の機器と判定基準で、対象信号を確認できなかったという結果です。「7月末まで関東地方で地震が発生しない」という意味ではありません。
地震の規模や震源、観測点との距離、機器の感度、周辺環境によっては、地震が発生しても信号を捉えられない可能性があります。そのため、今回は「地震が起こらないという予報」ではなく、「対象信号が確認されなかった期間」として記録します。
政府が示す「30年以内70%」は、南関東で発生するM7程度の地震についての長期評価です。一方、高島式は、数日から数週間を対象に微振動信号を観測する独自の解析であり、両者は対象期間も方法も異なります。
今回の観測だけから首都直下地震の発生日を判断することはできません。信号が確認された事例だけでなく、確認されなかった期間や、予測と実際の地震が一致しなかった事例も記録し、検証を続けます。
「観測なし」も検証に必要なデータ
これまでの高島式地震予知の記事では、予測と実際の地震が一致した例だけではなく、規模や震度のずれ、機器故障によって観測できなかった期間も公開してきました。今回の「前兆波なし」という結果も、前兆波が現れた期間と比較するために必要な記録です。
首都直下地震について、政府は30年単位の長期的な危険度を示しています。一方、今回の高島式地震予知では、7月末までの短期的な前兆波は確認されませんでした。
この二つは相反する結論ではありません。
「首都直下地震は本当に近いのか」という問いに対して、現在の科学が示せる答えは、長期的には発生確率が高いものの、具体的な発生日は分からないというものです。そして今回の独自観測では、少なくとも7月26日までのデータに、7月末の関東地震を示す前兆波は現れませんでした。
今後も前兆波が出た場合だけでなく、出なかった期間を含めて記録し、実際の地震発生と照合していくことが重要になります。
参考記事
首都直下と南海トラフ巨大地震が切迫。日本の備えには何が足りないか?
https://www.mag2.com/p/news/490599
首都直下地震「被害想定額95兆円」に日本は耐えられるか?発生率70%の重大リスク
https://www.mag2.com/p/news/506550
関連リンク
高島式地震予知の解説記事一覧
https://liquiddesign.co.jp/category/blog/earthquake/
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