8月23日に新たな前兆波を観測、関東の地震活動を検証

2026年8月23日午前2時00分、茨城県南部を震源とするM5.9の地震が発生しました。気象庁によると、震源の深さは68km、最大震度は5弱。茨城県・埼玉県・千葉県・東京都の17市区町村で震度5弱を観測しました。発震機構は東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界で発生した地震と解析されています。

では、高島式地震予知では、このM5.9を事前に捉えていたのでしょうか。

結論は「いいえ」です。今回のM5.9は、高島式の事前予測成功例には含めません。

ただし、M5.9の前に「前兆信号を観測したのに見逃した」ということでもありません。8月9~17日の鈴谷観測データが欠測しており、この期間については波形そのものを解析できませんでした。この欠測については、M5.9発生前に公開したNo.84ですでに「解析不能期間」として報告しています。

そこで今回は、前回公表した8月4日の予測、M5.9前の欠測期間、8月23日のM5.9、そして同日9時45分に新たに観測した信号を時間順に整理します。「分かっていること」と「分からないこと」を分けて検証することが、本記事の目的です。

地震予知速報

図1 2026年8月23日2時00分ごろの茨城県南部M5.9。図中の深さ70kmは速報値で、気象庁はその後68kmに更新

先週の記事では、何を予測していたのか

先週の記事では、8月4日に埼玉県南部の鈴谷観測点で2つの特徴的な信号を観測したことを報告しました。観測時刻は11時17分と15時44分で、総持続時間156秒、周波数12.2Hz・10.0Hz、最大振幅49mVp-pでした。この時点で公表した予測条件は、「8月11日±5日」「鈴谷から150km以内」「M3~4」「鈴谷で震度1~2程度」です。

埼玉県南部 地震波形
埼玉県南部 地震波形

図2 No.84で事前公表した8月4日の2つの観測波形

その後、予測期間内の8月8日3時41分に、茨城県北部でM3.9、深さ10km、最大震度3の地震が発生しました。No.84では、この地震が発生日・震源距離・規模の3条件とも8月4日に事前公表した範囲に入ったため、「予測条件と一致した地震」として記録しています。

ただし、条件が一致したことだけで、8月4日の信号と8月8日のM3.9との因果関係が証明されたわけではありません。高島式では、同じ判定基準で事例を蓄積し、信号とその後の地震活動との対応関係を検証しています。

また、8月23日により大きなM5.9が発生したからといって、8月4日の信号を後からM5.9の前兆に変更することはしません。地震予測を検証するうえでは、「地震発生後にどう説明できるか」ではなく、「信号を観測した時点で何を予測していたか」を固定することが重要だからです。

茨城県北部 地震情報

図3 8月8日に発生した茨城県北部M3.9。No.84では8月4日の信号との対応候補として記録

8月23日のM5.9の前兆信号は確認できたのか

8月23日の茨城県南部M5.9に先行する信号が観測されていたのか。この点について、現時点で答えは「分からない」です。

8月9~17日の鈴谷観測点ではデータが消失しており、この期間の波形を確認できませんでした。前回のNo.84でも、この期間を「前兆波なし」とは判定せず、「データ消失のため解析不能」と公表しています。

つまり今回分かっているのは、「M5.9の前兆信号を確認できなかった」という事実までです。「前兆信号がなかった」とも、「実際には出ていた」とも判断できません。

そのため、本記事では今回のM5.9を高島式の予測成功例には含めず、「欠測により事前評価できなかった地震」として記録します。

8月23日9時45分、新たな信号を観測

M5.9発生から約8時間後の8月23日9時45分、鈴谷観測点で、高島式が解析対象としている特徴的な低周波信号を観測しました。

観測値は、持続時間88秒、周波数11.7Hz・10.5Hz、最大振幅64mVp-pです。

埼玉県地震波形

図4 8月23日9時45分に鈴谷観測点で記録された波形。持続時間88秒、11.7Hz・10.5Hz、最大64mVp-p

この信号について、高島式では次の条件を事前予測として設定しました。

地震発生予想日:8月30日±5日
予測期間:8月25日~9月4日
震源範囲:鈴谷観測点から150km以内
予想規模:M3~4
埼玉南部で想定する揺れ:震度2程度

ここで重要なのは、この信号がM5.9の発生後に観測されたことです。したがって、8月23日午前2時のM5.9を予知した信号として扱うことはできません。

また、この信号がM5.9後の地震活動と関係しているかどうかも、現時点では分かりません。そこで、過去の地震へ後から結びつけるのではなく、「8月30日±5日」という新しい予測として事前に記録し、期間終了後に実際の地震活動と照合します。

4つの出来事を時系列で見ると、今回の位置づけが分かる

時点観測・地震今回の扱い
8月4日鈴谷で2つの信号を観測8月11日±5日、150km以内、M3~4と事前予測
8月8日茨城県北部M3.9No.84で8月4日信号との対応候補として記録
8月9~17日鈴谷データ欠測前兆波の有無を判断できない「解析不能期間」
8月23日 2:00茨城県南部M5.9今回の事前予測成功例には含めない
8月23日 9:45鈴谷で新たな信号8月30日±5日の新規予測として今後検証

このように時系列で整理すると、8月4日の信号、8月9~17日の欠測、8月23日のM5.9、そしてM5.9後に観測した9時45分の信号は、それぞれ別の事象であることが分かります。

今回のM5.9を「予知できた」と後から評価しない一方、8月23日9時45分の信号については、新しい予測条件を地震発生前の段階で公開します。そして予測期間終了後、条件に合う地震が発生したかどうかを同じ基準で検証します。

この「予測を先に固定し、結果を後から照合する」という手順を続けることが、高島式の予測性能を客観的に評価するために重要だと考えています。

富山県東部では8月18~23日に対象信号を確認せず

8月18~23日の富山県東部観測点では、高島式が解析対象としている特徴的信号は確認されませんでした。

ここで言えるのは、「この期間、富山県東部観測点では対象信号を検出しなかった」という観測事実までです。

信号が確認されなかったことを理由に、「今週は大きな地震が起こらない」と判断することはできません。観測点の位置、検出範囲、機器の感度や稼働状態などの影響があるためです。

高島式では、信号を観測した場合だけでなく、「観測しなかった期間」についても記録し、その後の地震活動と照合することで、見逃しを含めた検証を続けます。

なぜ「予知できなかった」と明記する理由

地震予測の性能を評価するためには、当たった事例だけを取り上げるのではなく、予測した時点の条件を固定し、その後の地震と照合する必要があります。

条件内に地震が起きたケースだけでなく、予測したものの地震が起きなかったケース、条件から外れたケース、そして今回のようにデータ欠測で評価できなかったケースも同じ基準で記録する必要があります。

今回のM5.9を予測成功例に含めないのはそのためです。

一方、8月23日9時45分の信号については、結果がまだ分からない現時点で予測条件を公開しています。8月25日~9月4日の予測期間が終了した後、条件内でどのような地震が発生したのか、あるいは発生しなかったのかをそのまま報告します。

高島式の予測性能を判断するうえで重要なのは、大きな地震が発生した後に説明できたかどうかではありません。「地震発生前に公表した条件が、その後の地震とどの程度一致するのか」を継続して検証することです。

気象庁も今後1週間程度の地震活動に注意を呼びかけ

気象庁は今回のM5.9について、過去の事例では大きな地震の後に同程度の地震が発生する割合が1~2割あるとして、揺れの強かった地域では地震発生から1週間程度、最大震度5弱程度の地震に注意するよう呼びかけています。特に発生後2~3日程度は、規模の大きな地震が発生することが多いとしています。

これは過去の地震活動に基づく気象庁の見通しであり、高島式の信号解析とは根拠も方法も異なります。したがって、気象庁の注意情報と高島式の8月30日±5日の予測を、同じ根拠による予測として結びつけることはできません。

いずれにしても、関東周辺では家具の固定、避難経路、非常用品など、日頃の地震への備えを今一度確認しておくことをおすすめします。

今週の観測結果と予測まとめ

今回の茨城県南部M5.9は、高島式では事前予測できておらず、予測成功例には含めません。M5.9に先行する可能性があった8月9~17日の鈴谷観測データが欠測していたため、この期間の信号の有無についても判断できません。
一方、M5.9発生後の8月23日9時45分には、鈴谷観測点で新たな特徴的信号を観測しました。高島式では、この信号について「8月30日±5日、鈴谷から150km以内、M3~4」という予測条件を設定し、結果が出る前の段階で公開します。
予測期間が終了した後、条件内で地震が発生したかどうかを確認し、結果を改めて報告します。
今回のM5.9は「当たった地震」ではなく、「欠測により事前評価できなかった地震」です。その事実をそのまま記録したうえで、新たに観測した信号について、これから結果を検証していきます。

参考記事

首都直下と南海トラフ巨大地震が切迫。日本の備えには何が足りないか?
https://www.mag2.com/p/news/490599

首都直下地震「被害想定額95兆円」に日本は耐えられるか?発生率70%の重大リスク
https://www.mag2.com/p/news/506550

関連リンク

高島式地震予知の解説記事一覧
https://liquiddesign.co.jp/category/blog/earthquake/

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