ネパールの大規模土砂災害、「地震」が原因ではなかった
今週の高島式地震予知では、富山県東部で前兆波は観測されず、当社独自の解析では、現時点で直近に関東で大きな地震が発生することを示す兆候は確認されていません。
一方、埼玉県南部・鈴谷では8月26日に前兆波を観測し、その後、8月30日に千葉県東方沖M4.8の地震が発生しました。
今回はこの最新の前兆波解析に加えて、ネパールで発生した大規模土砂災害と地震波の関係、2025年の熊本豪雨や2026年の地震で改めて注目された「災害時の水の確保」についても取り上げます。地震だけでなく、豪雨、土砂災害、断水まで含めた複合災害への備えを考えていきます。

2026年8月26日、ネパールと中国・チベット自治区の国境に近いヒマラヤ山岳地帯で、大規模な土砂災害と洪水が発生しました。
USGSの解析によると、ネパールのランタン国立公園付近で氷河を含む斜面が大きく崩壊し、大量の氷、岩石、土砂が川へ流れ込みました。発生した土石流と洪水は約100kmにわたって流下し、下流の集落や道路などにも大きな被害を与えたとされています。
ここで注目したいのが「地震」との関係です。
発生直後には、周辺で地震が発生し、その揺れによって氷河や斜面が崩れたのではないかとも考えられました。しかし、USGSによる地震波の解析では、地下の断層が動いた通常の地震ではなく、巨大な氷河、岩石、土砂が崩落したことによって大きな振動が発生した可能性が示されています。
そのエネルギーは、M5.2の地震に相当する規模だったとされています。
USGSとは「United States Geological Survey(アメリカ地質調査所)」の略称です。アメリカ内務省に属する科学機関で、地震、火山、地すべり、水資源、地質などを観測・研究しています。世界各地の地震や地すべりなどの自然災害について科学的なデータを公開している、米国を代表する公的研究機関です。
つまり今回のネパールの事例は、「地震によって土砂災害が起きた」のではなく、「巨大な土砂・氷河の崩壊が、地震計に記録されるほど大きな振動を起こした」という特徴的な災害だったと考えられます。
日本では地震と豪雨の両方に注意が必要
ネパールで起きた大規模な土砂災害は、日本にとっても決して他人事ではありません。
日本は地震が多いだけでなく、山地が多く、台風や集中豪雨による斜面崩壊、土石流、河川氾濫などが発生しやすい国です。
特に近年注意したいのが「線状降水帯」です。
線状降水帯は、発達した積乱雲が次々と発生し、ほぼ同じ場所を通過・停滞することで、数時間にわたって非常に強い雨を降らせる現象です。短時間で大量の雨が降るため、河川の増水だけでなく、土砂災害の危険度も急激に高まります。
さらに、大雨が続いた後は地盤に大量の水が含まれています。このような状態で地震の揺れが加われば、斜面が不安定になり、土砂災害の危険が高まる可能性があります。
これからの防災では、「地震だけ」「豪雨だけ」と別々に考えるのではなく、地震活動、雨量、地盤、河川、斜面の状態を合わせて見ることが重要です。
【今週の重要ポイント】直近の関東で大きな地震を示す前兆波は観測されず
それでは、8月23日から30日までの高島式地震予知による前兆波の観測結果を確認します。
今回は富山県東部と埼玉県南部・鈴谷の観測データを解析しました。
富山県東部では、この期間に当社が前兆波と判断する波形は観測されませんでした。
したがって、
「当社独自の前兆波解析では、現時点で直近に関東で大きな地震が発生することを示す兆候は確認されていません。」
これが今週の重要な結論です。
ただし、「地震が絶対に発生しない」という意味ではありません。地震の発生予測には現在も大きな不確実性がありますので、通常の地震への備えは引き続き行ってください。
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8月26日の前兆波と千葉県東方沖M4.8
一方、埼玉県南部・鈴谷では、8月26日15時47分に1個の前兆波を観測しました。
観測した波形は、
持続時間:54秒
周波数:12.2Hz、9.8Hz
最大振幅:35mVp-p
でした。

図:8月26日に鈴谷で観測した前兆波
その後、8月30日午前0時17分ごろ、千葉県東方沖を震源とするM4.8、深さ約30kmの地震が発生しました。鈴谷観測点から震源までの距離は約119kmでした。今回の解析では、8月26日に鈴谷で観測した前兆波について、この千葉県東方沖M4.8の地震に対応した可能性があると推定しています。(下記)

図:8月30日に発生した千葉県東方沖M4.8の震源
今回の解析では、8月26日に鈴谷で観測した波形について、この千葉県東方沖M4.8の地震に対応した可能性があると推定しています。
先週予測した茨城県南部M3.4を検証
次に、先週お知らせした地震予知の結果を確認します。
8月23日9時45分、埼玉県南部・鈴谷で別の前兆波を観測しました。
持続時間は88秒、周波数は11.7Hzと10.5Hz、最大振幅は64mVp-pでした。
(下記前兆波)

この波形から、地震発生予想日:8月30日±5日
震源地:鈴谷から150km以内
規模:M3~4
鈴谷での揺れ:震度2程度
と予測していました。
実際には8月26日8時33分ごろ、茨城県南部を震源とするM3.4、深さ約50kmの地震が発生しました。
鈴谷観測点から震源までの距離は約33kmでした。
発生日、震源距離、地震規模が事前に設定した予測範囲内だったことから、当社では8月23日に観測した前兆波に対応した地震である可能性があると考えています。(下記M3.4地震)

熊本豪雨で浮き彫りになった断水と「災害用井戸」
豪雨災害では、浸水や土砂災害だけでなく、その後に発生する「断水」も生活に大きな影響を与えます。
2025年8月に熊本県を襲った記録的大雨では、熊本市中心部でも大きな浸水被害が発生しました。
豪雨から1カ月が経過した2025年9月時点でも、一部の建物では断水が続き、住民や店舗の生活・営業に影響が残っていました。熊本日日新聞も、熊本市中心部で断水が長期化した建物があったことを報じています。
現在の記事で紹介しているように、断水した建物では地下から得られる水を生活用水として利用した事例もあり、「水道が止まったときに利用できる水が地域にあるか」ということの重要性が改めて浮き彫りになりました。
熊本市では、地震などによって広域的な断水が発生した際、民間事業者が所有する井戸を地域住民へ開放する「災害用井戸」の仕組みを整えています。
2026年7月10日時点では、市内99事業者、100カ所の井戸が登録されています。
さらに、2026年7月28日に熊本で発生した地震では、断水などへの対応として、熊本市が実際に利用可能な災害用井戸を公開しました。飲料水として提供できる井戸と、生活用水として利用できる井戸が区別され、地域住民への水の提供に活用されています。
ここは現在の「2026年7月の熊本地震」という表現から変更することをおすすめします。
なお、井戸水なら必ず安全というわけではありません。2025年の熊本豪雨の際にも熊本市は、水害によって井戸に雨水、土砂、泥などが混入する可能性があるとして、安全が確認できるまで飲用を控えるよう注意を呼びかけています。
災害用井戸を利用する際も、「飲料用なのか」「生活用水なのか」を必ず確認することが重要です。
地震・豪雨・土砂災害に備える|防災用品と井戸を確認
ネパールの土砂災害や熊本の豪雨・地震を見ると、災害発生時には、水道、電気、道路、通信など複数のライフラインが同時に影響を受ける可能性があります。
家庭では最低限、飲料水、非常食、携帯トイレ、懐中電灯・ヘッドライト、携帯ラジオ、モバイルバッテリー、予備電池、常備薬、救急用品、マスク、軍手、現金、給水用ポリタンクなどを準備しておきたいところです。
食料や飲料水については最低3日分、可能であれば1週間程度を備蓄しておくと安心です。飲料水は1人1日3リットルが一つの目安になります。
そして、ペットボトルの飲料水を準備することと同時に確認しておきたいのが、
「自宅の近くに災害時に利用できる井戸があるか」
ということです。
断水すると、飲料水だけでなく、トイレ、手洗い、清掃などにも大量の生活用水が必要になります。これらをすべてペットボトルの備蓄だけで賄うのは現実的ではありません。
自治体のホームページや防災マップで、「災害用井戸」「防災井戸」「協力井戸」などを検索し、自宅や職場の近くに利用できる井戸がないかを平時のうちに確認しておくことをおすすめします。
同時に、避難場所、土砂災害警戒区域、洪水ハザードマップも確認しておけば、地震と豪雨の両方に備えることができます。
今週のまとめ|関東の前兆波と複合災害への備え
今週の観測では、富山県東部で前兆波は確認されませんでした。
当社独自の解析では、現時点で直近に関東で大きな地震が発生することを示す兆候は確認されていません。
一方、埼玉県南部・鈴谷では8月26日に前兆波を観測し、その後8月30日に千葉県東方沖M4.8の地震が発生しました。また、先週8月23日に観測した前兆波については、8月26日の茨城県南部M3.4が予測範囲内で発生しています。
そして今回、もう一つ考えておきたいのが「複合災害」です。
ネパールでは巨大な氷河・岩石・土砂の崩壊が、M5.2相当の地震動として観測されるほどのエネルギーを生み出しました。熊本では豪雨や地震による断水を受け、地下水や災害用井戸が地域の重要な水源となっています。
日本で暮らす以上、地震だけに備えればよいわけではありません。
線状降水帯による豪雨、土砂災害、河川氾濫、停電、断水まで含めて考える必要があります。
非常食や飲料水を準備するとともに、自宅周辺の避難場所、土砂災害警戒区域、洪水リスク、そして災害時に利用できる井戸の場所を一度確認してみてください。
※本記事の前兆波および地震予測部分は、当社独自の観測・解析に基づく研究上の評価です。気象庁等による公的な地震予知情報ではなく、将来の地震発生を保証・断定するものではありません。
参考記事
首都直下と南海トラフ巨大地震が切迫。日本の備えには何が足りないか?
https://www.mag2.com/p/news/490599
首都直下地震「被害想定額95兆円」に日本は耐えられるか?発生率70%の重大リスク
https://www.mag2.com/p/news/506550
関連リンク
高島式地震予知の解説記事一覧
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