9月21日、台風25号が関東地方に最接近し、伊豆諸島や千葉県、神奈川県を中心に大雨と強風をもたらしました。神奈川県では人的被害に加え、横浜市内などで複数の崖崩れも確認されています。こうした大雨による崖崩れを考えるうえで重要なのが、「地面の中に入った水」です。

地盤は、土の粒同士がかみ合い、支え合うことで一定の強さを保っています。しかし、大量の雨が降ると、雨水が少しずつ地中へ染み込み、土のすき間に含まれる水が増えていきます。すると土の粒同士が支え合う力が弱まり、斜面が崩れやすい状態になります。

今回確認された崖崩れも、大雨によって地盤が不安定になる仕組みを考えるうえで分かりやすい事例です。注意したいのは、雨が止んだからといって、地盤がすぐ元の状態に戻るわけではないことです。地中に入った水が時間をかけて移動するため、雨の後もしばらくは地下水位が高い状態が続くことがあります。

一方、地震による地盤変化は起こり方が異なります。強い揺れが短時間に加わることで、地面が沈んだり、横に動いたり、地下水を多く含む砂質地盤では液状化が起きたりします。断層付近では、地表そのものがずれることもあります。

つまり、大雨による地盤変化は「水が地中へ入り、時間をかけて地盤の強さを弱めていく変化」、地震による地盤変化は「強い揺れや断層運動によって、短時間に地盤を変形させる変化」です。

同じ「地盤が変わる」という現象でも、その原因と変化するまでの時間は大きく異なります。今回の記事では、この違いを踏まえながら、今週の地震観測結果も見ていきます。

大雨・台風、地震による地盤変化のメカニズム

地震予知結果報告|9月13日~9月20日

今週は、富山県東部および埼玉県南部・鈴谷の観測データを解析しました。

観測・対象期間/発生解析結果・確認事項
富山県東部9/13~9/20高島式の解析対象となる前兆波は確認されず
埼玉県南部・鈴谷9/13~9/20高島式の解析対象となる前兆波は確認されず
茨城県南部地震9/17 0:07ごろM4.8/深さ約70km/最大震度3。鈴谷から約50km

富山県東部

9月13日から9月20日までの解析では、本研究会が前兆波として解析対象としている特徴的な信号は観測されませんでした。高島式地震予知の今週の判定では、“首都圏直下地震の発生を示す前兆波は確認されていない”、という結果です。

埼玉県南部・鈴谷

同期間の鈴谷観測データについても、前兆波と判断する信号は観測されませんでした。

一方、9月17日0時07分ごろ、茨城県南部を震源とするマグニチュード4.8、深さ約70kmの地震が発生し、最大震度3を観測しました。気象庁の公表値でも、震源は北緯36.1度、東経140.1度、深さ約70km、M4.8とされています。鈴谷観測点から震央までの距離は約50kmです。

今回、この地震に対応すると考えられる前兆波は、9月13日~20日の鈴谷データからは確認できませんでした。ただし、鈴谷では8月30日~9月6日にデータを取得できていない期間があります。そのため、仮に高島式が対象とする信号が地震発生前に存在していた場合、その未取得期間に現れていた可能性は残ります。今回の結果だけから「前兆がなかった」と断定することはできず、欠測期間を含めて慎重に評価する必要があります。

9月17日0時07分茨城県南部で発生した地震の情報

図:2026年9月17日 0時07分ごろ 茨城県南部 M4.8/深さ約70km/最大震度3

大雨のあとも注意が必要なのはなぜか

大雨による地盤変化で注意したいのは、雨が止んだ後も地盤内部の状態がすぐには元に戻らないことです。

雨水は地表から少しずつ地中へ浸透します。大量の雨が続くと、土のすき間にある水の圧力、いわゆる「間隙水圧」が高まり、土の粒同士が支え合う力が弱くなります。特に斜面では、この状態がすべりや崩壊につながることがあります。

さらに、地表の雨が止んでも、地中に入った水は時間をかけて移動します。そのため、雨のピークを過ぎた後に地下水位が上昇する場合もあります。大雨の後に「もう晴れたから大丈夫」と考えるのではなく、しばらくは斜面や崖の状態に注意する必要があります。

一方、地震では地盤に強い揺れが短時間に加わります。地下水を多く含む緩い砂地盤では、繰り返し揺すられることで間隙水圧が急激に上昇し、土が一時的に強度を失う「液状化」が発生することがあります。

液状化が起こると、建物が沈んだり傾いたりするほか、道路や配管が変形したり、地盤そのものが横方向へ移動したりすることがあります。また、大きな地震では断層運動によって地表にずれが残る場合もあります。

ここで興味深いのは、大雨と地震のどちらでも「地盤の中の水」が関係する場合があることです。ただし、変化の起こり方は違います。

大雨では、雨水が地中へ入り、数時間から数日かけて地盤の状態が変化します。

地震では、地震動によって数秒から数分という短い時間に地盤の状態が急変します。

つまり、「大雨はじわじわと地盤を弱くする」「地震は一気に地盤を変化させる」と考えると、その違いが分かりやすくなります。

また、大雨によってすでに多くの水を含んでいる地盤に強い揺れが加わった場合には、斜面や軟弱地盤の状態がさらに不安定になる可能性があります。大雨と地震は別々の災害ですが、地盤という視点で見ると、両方をあわせて考えることも重要です。

今週の解析まとめ

9月13日~20日の富山県東部および埼玉県南部・鈴谷の観測では、高島式で解析対象としている前兆波は確認されませんでした。

9月17日に発生した茨城県南部M4.8の地震についても、鈴谷の観測データから対応すると考えられる前兆波は確認できませんでした。ただし、8月30日~9月6日にデータを取得できていない期間があるため、この期間に信号が存在していたかどうかは検証できません。

今後も観測データと実際に発生した地震を照合しながら、継続して解析を行っていきます。

参考記事

・国土交通省「令和8年台風第25号による被害状況等について」

https://www.mlit.go.jp/saigai/saigai_260920.html

・千葉県「令和8年台風第25号に伴う災害に係る災害救助法の適用について」

https://www.pref.chiba.lg.jp/bousaik/press/saigaikyujoho-r80921.html

・地盤工学ジャーナル「浸透流解析と実物大崩壊実験による豪雨時浸透および源頭部崩壊メカニズム」https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgs/15/2/15_355/_article/-char/ja

・気象庁「2026年09月17日00時07分頃 茨城県南部 M4.8」https://www.data.jma.go.jp/eew/data/mech/fig/mc2026091700070000N360600E14006000688148.html

関連リンク

・高島式地震予知の解説記事一覧
  https://liquiddesign.co.jp/category/blog/earthquake/

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