首都圏地震の実測と前兆波を検証

9月29日午前4時45分、茨城県南部を震源とするM4.9の地震が発生しました。震源の深さは約50km。茨城県と埼玉県では最大震度4を観測し、東京都23区や多摩東部でも震度3の揺れが広がりました。

首都直下地震というと、東京の真下で突然起こる大地震を想像しがちです。しかし、東京から少し離れた場所で起きた地震でも、都内に強い揺れが及ぶことがあります。

実際、この1か月を見ると、9月17日に茨城県南部M4.8、22日にも同地域でM3.9が発生しています。首都圏では、大地震に至らない規模の地震も繰り返し起きているのです。

一方、高島式地震予知の埼玉県南部鈴谷観測点では、9月24日と27日に特徴的な低周波信号を記録しました。24日の信号からは、9月末ごろ、鈴谷から150km以内での地震発生を予測しており、29日のM4.9はその条件に入っています。

今回は、過去に首都圏を襲った地震を振り返りながら、9月20~30日の観測結果と、実際に発生した茨城県南部M4.9との関係を詳しく見ていきます。

茨城県で発生した地震の概要

首都直下地震は「東京23区の真下」だけではない

首都圏の地下は、複数のプレートが重なり合う複雑な構造になっています。地震は浅い活断層だけでなく、地下深くに沈み込んだプレートの内部や、プレート同士の境界でも発生します。そのため、震源が茨城県や千葉県であっても、東京や埼玉県で強い揺れを観測することがあります。

過去に目を向けると、1855年の安政江戸地震では、現在の丸の内、本所、深川などで震度6以上の揺れがあったと推定され、江戸市中に甚大な被害が出ました。

それほど昔の話ではありません。2005年7月には千葉県北西部でM6.0、2021年10月にも同地域でM5.9の地震が発生し、いずれも東京都内で最大震度5強を観測しています。

特に2021年の地震では、鉄道の運休やエレベーターへの閉じ込めが相次ぎました。建物が大きく損傷しなくても、交通や生活インフラが止まれば、人口が密集する東京では大きな混乱につながります。

なお、1923年の関東大震災を引き起こしたM7.9は、相模トラフ沿いで発生したプレート境界地震です。首都圏に被害を及ぼす地震には複数のタイプがあり、発生場所や仕組みも一様ではありません。

過去1か月、関東では実際に何が起きたのか

8月31日~9月30日に公表された主な地震情報を確認したところ、今回調べた首都圏周辺の内陸地震ではM5以上は見当たりませんでした。

ただし、茨城県南部では9月に入り、M4前後の地震が複数発生しています。

9月17日午前0時07分にはM4.8、深さ約70km、最大震度3の地震を観測。前回のNo.88では、この地震に対応すると考えられる前兆波を鈴谷観測点の9月13~20日のデータから確認できなかったことを報告しました。

その後も、9月22日午後3時34分にM3.9、深さ約50km、最大震度3の地震が発生しています。

さらに29日午前4時45分にはM4.9、最大震度4を観測しました。埼玉県のさいたま市中央区・南区、春日部市などでも震度4となり、東京都内にも揺れが及びました。

震度4になると、多くの人が驚き、つり下げてある物が大きく揺れます。深夜や早朝であれば、揺れで目を覚ます人もいるでしょう。

もちろん、M4級の地震が続いたからといって、次にM7級が発生するとは限りません。しかし、首都圏では大きな被害を伴う地震がない期間でも、地下で地震活動が続いていることは知っておきたいところです。

9月20~30日の高島式前兆波観測

今回解析したのは、富山県東部と埼玉県南部・鈴谷の2観測点です。

富山県東部では、9月20~30日の期間中、高島式が前兆波として解析対象とする特徴的な信号は確認されませんでした。

一方、鈴谷観測点では、9月24日と27日の2回、特徴的な低周波信号を記録しています。

1. 9月24日12時49分の観測結果

最初の信号は9月24日12時49分に観測されました。

総持続時間は162秒、主な周波数は11.7Hzと9.8Hz、最大振幅は33mVp-pでした。

9月24日12時49分に鈴谷で発生した地震の波形

図1 9月24日12時49分・鈴谷の観測波形

この観測結果から、高島は地震発生時期を9月末を中心とする約±5日、震源範囲を鈴谷から150km以内と推定しました。研究会の内部評価では、発生確率80%と記録しています。

なお、この80%は高島式独自の推定値であり、気象庁が発表する確率や、統計的な校正を経た発生確率とは異なります。

2. 9月27日14時29分の観測結果

続いて、9月27日14時29分にも新たな信号を観測しました。

総持続時間135秒、周波数11.7Hzと9.6Hz、最大振幅は79mVp-pでした。

9月27日14時29分に鈴谷で発生した地震の波形

図2 9月27日14時29分・鈴谷の観測波形

24日の信号と比べると、主な周波数帯は近いものの、最大振幅は33mVp-pから79mVp-pへと変化しています。

高島は、この2回目の信号についても、鈴谷から150km以内で発生する地震との対応を検討しました。

そして、その約1日半後の9月29日、茨城県南部でM4.9の地震が発生しました。

第1の信号は9月24日12時49分。総持続時間162秒、主な周波数11.7Hz・9.8Hz、最大振幅33mVp-pでした。研究会はこの段階で、地震の発生時期を9月末を中心とする約±5日、対象地域を鈴谷から150km以内と推定し、内部評価で発生確率80%と記録しています。この80%は研究会による推定値で、気象庁の公式確率や、統計的に校正済みの確率を意味するものではありません。

第2の信号は9月27日14時29分。総持続時間135秒、周波数11.7Hz・9.6Hz、最大振幅79mVp-pで、研究会は鈴谷から150km以内の地震との対応を検討しました。周波数帯が近い一方、振幅や継続時間には違いがあります。

9月29日の茨城県南部M4.9と照合

9月29日午前4時45分に発生した茨城県南部M4.9は、鈴谷観測点から震央まで約36km(研究会算定)の位置で発生しました。

9月24日に示した「9月末ごろ、鈴谷から150km以内」という予測条件に入っています。

また、24日の信号から地震発生までは約4日16時間、27日の信号からは約1日14時間でした。

高島は、この2つの信号が、いずれも29日のM4.9に関係していた可能性があると考えています。

9月29日午前4時45分に発生した茨城県南部の地震情報

図3 9月29日 茨城県南部M4.9の震度分布

地震波形から震源までの距離も検討

今回の地震では、添付の地震波形からP波とS波の到着時刻の差も調べています。

P波は最初に届く比較的速い波、S波はその後に届く、強い揺れを伴うことの多い波です。この到着時間の差を「P-S時間」と呼び、震源までのおおよその距離を推定する手掛かりになります。

今回、高島が読み取ったP-S時間は約6秒でした。

これを大森公式による簡易的な方法で換算すると、震源までの距離は約48kmと試算されます。

ただし、この値は地下の地震波速度を単純化した概算です。鈴谷から震央までの水平距離約36kmや、震源の深さ約50kmとは、それぞれ意味が異なります。

したがって、この距離の計算だけで2つの前兆波が同じ地震に由来すると断定することはできませんが、今回は観測時刻、予測範囲、その後の地震発生状況を合わせ、9月29日のM4.9との対応候補として記録します。

9月29日に発生した地震の波形

図4 9月29日の地震波形(P–S時間は研究会による読み取り)

富山では前兆波なし、鈴谷では2回検出。この違いをどう考えるか

今回の観測で興味深いのは、富山県東部では対象となる前兆波が確認されなかった一方、鈴谷では24日と27日に2つの特徴的信号が記録されたことです。

実際、その後の29日には鈴谷から比較的近い茨城県南部でM4.9が発生しました。

観測地点によって結果が異なるのは、設置場所や検出特性、周辺環境などが同じではないためと考えられます。

そのため、富山県東部で前兆波が観測されなかったことだけを理由に、「首都圏直下地震は起こらない」と判断することはできません。

今後も2地点の観測結果を比較しながら、どのような信号が、どの地域の地震と対応するのかを調べていきます。

また、高島式の予測性能を確かめるうえでは、信号を観測した時点の予測条件を残し、実際に起きた地震と照合することが欠かせません。今回のように条件が一致した事例はもちろん、欠測した期間や予測と一致しなかった事例も記録し、解析精度の向上につなげていきます。

今週の解析まとめ

9月20~30日の観測では、富山県東部で対象となる前兆波は確認されませんでした。一方、埼玉県南部・鈴谷では9月24日と27日に特徴的な信号を観測しています。

その後、29日に発生した茨城県南部M4.9は、24日の信号から推定した発生時期と震源範囲の両方に入りました。27日の信号についても、高島は同じ地震との対応を有力な候補として検討しています。

今回は2つの信号とM4.9との対応が見られましたが、同一地震との因果関係については、今後も事例を積み重ねて検証していきます。

首都直下地震は、いつ、どこで発生するかによって私たちの生活への影響が大きく変わります。特に東京では、鉄道やエレベーターが止まるだけでも、日常生活に大きな支障が生じかねません。

地震予知の情報とあわせて、寝室の家具固定や避難経路、停電・断水への備えも、この機会に確認しておきましょう。

主な参照資料

・気象庁:2026年9月29日 茨城県南部M4.9の発震機構・震源情報
https://www.data.jma.go.jp/eew/data/mech/fig/mc2026092904450000N360600E13954000471549.html

・気象庁:2026年9月17日 茨城県南部M4.8
https://ds.data.jma.go.jp/svd/eew/data/mech/fig/mc2026091700070000N360600E14006000688148.html

・気象庁:関東地方で起きる地震の特徴/首都直下地震について
https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/1923_09_01_kantoujishin/actvity.html

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