「おはよう」と送ったメッセージに、昼になっても返信がない。電話にも出ない。買い物に出ているのか、昼寝をしているのか。離れて暮らしていると、家の中で何が起きているのか分かりません。
一人暮らしの親を見守るとき、室内で動きがあった時間が分かれば、連絡や訪問を考える材料になります。カメラなしの見守りは、すでに人感センサーなどで実用化されています。当社が探るのは、空気の小さな圧力変化から歩行やドア操作を捉え、緊急通報を補う方法です。現行基板の実験で、生活動作に伴う反応を確認しました。
1.親の暮らしを撮影せず、何を知ることができる?

見守る家族は「元気か知りたい」。親は「家の中まで見られたくない」。その両方に応える選択肢が、生活の変化を記録する見守りセンサーです。ただし、何を捉えるかは方式ごとに違います。
カメラ・人感・開閉・温湿度センサーの違いは?
カメラは、撮影範囲にいる人の姿や室内の状況を映像で確認できます。詳しい様子を知りたい家庭に向きますが、撮影場所や映像を見られる人について、本人とのプライバシー合意が必要です。
一般的な赤外線式の人感センサーは、人と周囲の温度差による赤外線の変化を捉えます。廊下などの通過を映像なしで確認できる一方、静止した人は捉えにくい方式です。なお、人感センサーには複数の方式があり、すべてが同じ特性ではありません[1]。
開閉センサーは、取り付けた扉が開いた・閉じたことを知るのに向いています。トイレや玄関など、確認したい場所が明確な場合に役立ちます。温湿度センサーは、部屋の暑さや湿度を把握するもの。人の動きは別の情報で確かめます[2]。
ミリ波センサーには、映像を使わず、人の位置や小さな動きを捉えるものもあります[3]。そのため、「カメラがない」「小さな動きが分かる」だけで空気動圧センサーが優れているとは言えません。違いは、何の変化を、どこから捉えられるかにあります。

2.空気の変化で、歩行やドア操作はどこまで分かった?
人が歩く。扉が動く。何気ない動作でも、部屋の空気には変化が生まれます。当社のLDS-T6Bは、その小さな圧力変化を波形として記録する空気動圧センサーです。
2026年9月9日の当社実験では、マンションの約16畳のリビングで、現行の介護Logセンサー基板を使用しました。無人状態と通常歩行、静かな歩行、ドア開閉・ノックを測定し、空調の運転・停止も比較しました。ここで紹介するのは、基板をケースに収めた結果です[4]。

写真1 実験室内、基板、設置位置。住まいのリビングで、空調条件を変えながら測定しました。[4]
普通に歩いたときと、静かに歩いたとき
通常歩行では、波形のばらつきが無人時の約4.6に対し、空調停止時15.9、運転時16.9でした。約3.4〜3.7倍の差です。空調が動いている室内でも、歩いている区間に無人時より大きな反応が残りました。

図1 無人時と通常歩行の比較。SDは波形のばらつきの大きさです。検知率を表す数値ではありません。[4]
では、足音を抑えて歩いたらどうでしょう。約5mから約2mへ静かに歩く区間では、1秒間の最大振れ幅(波形の振れ幅の大きさ数値)が空調停止時44、運転時128。対応する無人時の最大値21、19を上回りました。反応は小さく短くても、記録には違いが現れています。

図2 通常歩行と静かな歩行の実測波形(空調停止、約5mから約2m)。床を擦る音なども含む実験です。[4]
ドア開閉・ノックでは、約1m・3m・5mの各位置で、区間全体の最大振れ幅が245〜253となり、無人時の20〜22より大きな反応がありました。一部は記録上限に達しているため、距離別の感度を順位づける数値ではありません。
AI解析では、実験記録とCSVの数値データの時刻を合わせて対象区間を選び、AIが作成した集計プログラムを使って計算しました。通常歩行は区間全体のばらつき、静かな歩行は1秒ごとの最大値と最小値の差を比較しています。0〜255の相対値で記録した波形を、同じ手順で確かめた結果です。
空気動圧センサーならではの利点は?
カメラとの違いは、室内を撮影せずに人やモノの動作の手掛かりを得られることです。開閉センサーとの違いは、扉そのものに取り付けなくても、同じ基板で歩行と離れたドア操作の両方に反応があったこと。生活動作ごとに機器を増やす負担を減らせるか、検証する根拠になります。
ただし、どの扉が動いたか、人が何人いるかまで特定した結果ではありません。今回の実験は、他方式との性能比較ではありません。実測で得られた強みは「一つの基板で複数の生活動作の反応を記録できたこと」です。
3.室温と生活の動きを一緒に見ると、何が変わる?
たとえば、「室温が高い」という情報に、「普段は動きがある時間なのに、今日は反応が少ない」が重なったら。温度の確認に加えて、本人へ電話する理由がはっきりします。これは当社が検討している利用場面であり、健康状態を自動で診断する機能ではありません。
当社の空調連動構想では、温湿度・運転モード・風量・運転開始時刻と、空気動圧の波形を同じ時間軸で比べます。エアコンが風量を変えた時刻が分かれば、その前後の反応を空調による変化として検討できます。人の動きとの混同を減らせるかが、次の実証の要点です。
温湿度と動きを組み合わせる製品は、すでにあります[5]。当社が追加したいのは、歩行やドア操作に伴う圧力波形という情報です。リモコン設置台など、日常使う物の周辺へ組み込み、室内環境の確認、家族通知、対応機器の遠隔空調操作へつなぐ形を検討しています。設置台への組み込みと連携は、これから評価する構想です。
動きがないだけで、緊急通報してよい?
昼寝や外出でも反応は減ります。反対に、テレビ音声に反応しても、本人が活動している証拠にはなりません。時間帯や外出情報を合わせ、設定時間を超えて反応が少ない場合に、担当者が確認する流れが必要です。
想定する流れは「生活動作を記録する → 確認が必要な状態を通知する → コールセンターが本人に連絡する → 必要に応じて駆けつけや救急要請につなぐ」。通報ボタンはそのまま使います。24時間365日の見守りには、センサーと、連絡を受けて対応する体制の両方が必要です[6]。
今、家族が選ぶなら何を確認する?
近くで対応できる家族がいるなら、まず通知型サービスを検討できます。すぐに行ける人がいなければ、夜間も対応する駆けつけ付きが候補です。本人には、何を記録し、誰が見られるのかを説明し、納得できる方法を一緒に選びます。
費用は機器代だけでなく、月額料金・通信費・駆けつけ費用まで確認します。通信環境は、実家のWi-Fiや固定電話の要否、停電・通信断の知らせ方まで確認してください。例えば、自治体などの制度は地域や対象条件で異なるため、高齢者福祉窓口や地域包括支援センターへの相談が出発点となります[6]。
当社の空間見守りは、緊急通報との連携をこれから実証する段階で、販売価格や提供時期は未定です。少人数の利用者宅で、日々の動作を捉えられる割合、不要な通知、確認担当者の負担を測ります。高齢者の歩き方や睡眠、ペットの影響も確かめます。
「電話に出ない」とき、今朝の生活の動きが分かれば、次にどう確認するかを考えやすくなります。空気動圧センサーの実測結果を、その判断に役立つ情報へ育てることが当社の目標です。自治体・見守りサービス事業者の皆さまと、既存の緊急通報を補う実証を進めればと考えています。
出典と関連記事
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4 LDS 人の気配を感じる空気動圧センサーとは 実験写真・波形・比較図
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株式会社リキッド・デザイン・システムズ
センサー共創ビジネス担当 info@liquiddesign.co.jp
製品仕様書:https://liquiddesign.co.jp/wp-content/uploads/2025/10/LDS-VitalSensor-spec.pdf

