フィリピンで発生した大地震とその教訓
2025年9月、フィリピンでマグニチュード7を超える大規模な地震が発生しました。震源はルソン島近海で、広い範囲で家屋倒壊やインフラ被害が相次ぎ、多くの住民が避難を余儀なくされました。フィリピンは日本と同じように、プレートが複雑にせめぎ合う地域に位置しており、地震や火山噴火といった自然災害に繰り返し見舞われてきました。今回の地震も、プレート境界での応力集中が限界に達した結果と考えられています。
この地震が私たちに示す教訓は二つあります。ひとつは、地震は「発生の場所や規模を正確に事前予測することが極めて難しい」災害であるという現実です。もうひとつは、海洋プレートと大陸プレートがぶつかる地域では、比較的小さな地震が前兆として現れることがあるという点です。フィリピンの地震は津波の発生を伴いましたが、津波の規模は東日本大震災ほど大きなものではありませんでした。それでも現地の沿岸部では浸水被害が確認され、人々の生活に深刻な影響を与えました。日本もまた同様に「海溝型地震」と「津波」のリスクを常に抱えているため、他国での災害事例を決して他人事と捉えるべきではないのです。
アウターライズ地震とは
アウターライズ地震とは、日本海溝や南海トラフといった沈み込み帯の「外側」、すなわち太平洋プレート内部で発生する大規模な地震のことを指します。通常のプレート境界型地震は、大陸プレートと海洋プレートの境界で発生しますが、アウターライズ地震は沈み込み直前のプレートが「引っ張られる力」によって割けることで発生します。このため、断層の動きが急激で、海底地形を大きく変形させる傾向があります。
特徴的なのは「津波の規模が大きくなりやすい」ことです。同じマグニチュードでも、海溝の外側で発生した場合、海水の押し上げ量が増すため、沿岸部に到達する津波の高さが数倍に膨らむことがあります。2011年の東日本大震災後も、気象庁や多くの地震学者が「次に起きるかもしれないのはアウターライズ地震だ」と強い警戒を示してきました。
これらの地震は、震源が海溝から遠いため内陸では揺れを比較的弱く感じる一方、津波は壊滅的な被害をもたらす可能性があります。つまり「揺れが小さい＝安全」とは限らないのがアウターライズ地震の怖さなのです。
現在観測されている前兆と発生の可能性
当社の高島技術顧問の観測によれば、2025年9月24日から10月3日にかけて、北緯37.5度・東経144.5度付近で多数の微小地震が発生しています。この地点は、まさに日本海溝の外側に位置する「アウターライズ域」にあたり、過去の大地震の前にも同様の群発地震が確認されています。今回の微小地震群が「前震」にあたるのか、それとも単なる小規模な応力解放なのかは断定できませんが、注意を払うべき状況であることは間違いありません。
仙台（震央から約350km離れた地点）での観測では、現時点で「破壊核形成信号（前兆波）」は捉えられていません。しかし、この信号がもし観測されれば、おおむね10日以内にM8クラスの巨大地震が発生する可能性があると高島式理論では推定されています。特に、震源が福島県沖〜宮城県沖の海溝外側であった場合、揺れよりも津波被害の方が深刻化する可能性が高いのです。
シナリオは大きく二つに分かれます。
- 前兆波が観測されない場合：微小地震群は「小規模な応力解放」にとどまり、大地震には至らない可能性がある。
- 前兆波が観測された場合：過去の実績から、観測から10日前後で大規模地震が発生する傾向があり、巨大津波のリスクが急速に高まる。
したがって、今後数日の観測結果が極めて重要な意味を持ちます。では、以下に最新の解析結果を報告します。
2025年10月3日発生の地震結果報告
9月25日と26日に埼玉県南部の鈴谷観測点で観測された前兆波について、以下のように予測と発生地震が一致しました。
① 9月25日観測の前兆波（持続時間42秒, f=12.3Hz/9.9Hz, Max46mVp-p）
→ 10月3日 千葉県南東沖 M4.3 深さ60km (最大震度2, L(鈴)=117) と対応
図1：2025年10月3日 千葉県南東沖M4.3の震度分布
② 9月26日観測の前兆波（持続時間27秒, f=11.2Hz/10.2Hz, Max28mVp-p）
→ 10月3日 東京湾 M4.1 深さ110km (最大震度2, L(鈴)=47) と対応
図2：2025年10月3日 東京湾M4.1の震度分布
【結論】
今回の事例は、前兆波観測に基づく「高島式地震予知技術」が、実際の地震発生と高い精度で対応したことを示しています。これにより、前半で説明したアウターライズ地震のリスクと、最新の埼玉県南部鈴谷観測データがつながり、科学的予測の実効性が具体的に示された形となります。
【関連リンク】
◎ 高島式地震予知の解説記事一覧：https://liquiddesign.co.jp/category/blog/earthquake/
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