研究スタートの動機から失敗の連続まで

 糖尿病は世界的に増加しており、その管理には定期的な血糖値測定が欠かせません。しかし、指先に針を刺す従来の方法は、患者にとって負担が大きいものです。私自身、義理の父親を糖尿病で亡くした経験から、血糖値測定の大変さや看病の苦労を身近に感じていました。「血糖値の測定がもっと簡単であれば、もっと健康管理がしやすくなり、糖尿病のリスクを低減できるのではないか?そして、食事療法などのアドバイスを加えれば五行ドクターのような未病改善アプリが作れるのでは?」と考えていました。

そんな折、糖尿病と血行動態パラメータの関連の記事を見つけて、血圧や血流の動態から血糖値を推測できる可能性があることを知りました。これを受けて、当社の血行動態推定技術(五行ドクターに利用した特許技術)を活用することで何かできるのではないかと考え、研究をスタートさせました。

血圧と血糖値の関係を探る

血圧と血糖値には意外な関連があることが知られています。

  • 血糖値が高いと血管が硬くなり、血圧が上がる傾向がある
  • 血糖値が急に下がると、血流の変化に伴い血圧が不安定になる
  • 血管の柔軟性や血流の動態は、血糖の影響を受ける

私たち開発チームは、血圧測定データから血糖値を推測できる可能性を探るため、以下の血行動態パラメータに注目しました。

  • 脈圧(BPW):血管の硬さの指標
  • 平均血圧(BPM):血液が全身を循環する際の平均的な圧力
  • 駆出時間(ET):心臓が血液を送り出す時間
  • 心拍出量(CO):一回の拍動で送り出される血液の量
  • 総末梢抵抗(TRE):血流の流れやすさ
  • 動脈の弾性(COMP):血管の柔軟性

これらのパラメータは、五行ドクターが未病を可視化するときに利用しているパラメータです。この数式を活用し、血圧から血糖値を推測するモデルを構築することを目指しました。ベンチャー企業にはかなり無謀なチャレンジですが、AIという強力な助っ人があり、少人数でも短時間で数式モデルを構築できる可能性がありました。そして、これらのパラメータを活用し、血圧から血糖値を推測するモデルを構築することを目指しました。

最初の試行錯誤と失敗の連続

私たちはまず、シンプルな回帰分析を試みました。しかし、結果は期待を大きく下回るものでした。

「高血糖の人の予測値が低すぎる…」

「低血糖の人の誤差が200%以上もある…!」

この結果から、血糖値と血行動態の関係は単純な直線的なものではなく、より複雑な要因が絡んでいることが明らかになりました。単純な計算式だけでは不十分であり、新たなアプローチが必要であると痛感しました。

ここから私たちは、本格的なデータ収集と分析に乗り出しました。しかし、思わぬ壁が次々と立ちはだかります。

データ収集の壁

まず最初に直面したのは、適切なVitalデータの収集でした。医療データはプライバシーの問題があり、容易に取得できるものではありません。また、血圧と血糖値を同時に測定した大規模データが少なく、信頼できるデータセットを見つけるだけでも一苦労でした。

さらに、データを収集できたとしても、それが必ずしも統一された形式で提供されるわけではありません。異なる機器や測定条件によってバラつきがあり、データの前処理に想像以上の時間を費やしました。

計算ミスとモデルの混乱

データが整い、いよいよ数式モデルを試す段階になりました。最初は手計算で単純な数式を組み、Excelでモデルを構築しましたが、ミスが多発。「なぜか血糖値がマイナスになる」「計算のたびに数値が大幅に変わる」といった問題が続出し、何度も数式を見直しました。

数値が思ったように出ない原因を探るうちに、使っているデータの単位が統一されていなかったことに気づきました。血圧の単位がmmHgとkPaで混在していたり、心拍出量の単位がL/minだったりmL/sだったりと、データの扱いの細かいミスがモデル全体の精度を著しく低下させていたのです。

AIモデルとの格闘

「AIならもっと正確なモデルを構築できるのでは?」と考え、機械学習を導入。しかし、ここでも問題が発生しました。

AIに学習させるための特徴量の選択に悩み、最初はすべてのパラメータを詰め込んで学習させましたが、予測値のばらつきが大きく、意味のある関係が見えてきません。そこで、一つずつ不要な特徴量を削減し、最適な組み合わせを見つけるまでに何度も試行錯誤しました。

さらに、AIの学習結果が必ずしも人間の直感に沿ったものではないことにも悩まされました。例えば、「血圧が高いほど血糖値も高い」というシンプルな相関を期待していたのに、AIは「特定の血圧範囲では逆の相関がある」と予測することがありました。

「この結果は本当に正しいのか?」と何度もデータを見直し、最終的にそれが食事や運動などの外的要因による影響であることを突き止めました。

こうした試行錯誤を経て、次のステップへ進むことになります。

Part2 につづく
Part3 はこちら

この技術を一緒に育ててくれるパートナーを募集しています

この研究はまだ完成ではありません。しかし、ここまでの成果は、非侵襲的な血糖モニタリング技術として実用化の大きな一歩となるものでした。今後、スマートウォッチや体組成計との連携、健康食品との連携、企業の健康経営プログラム、生活習慣病予防アプリへの実装など、あらゆる活用の可能性があります。

現在、この技術をともに育て、社会に広めてくれる協業・支援パートナー企業を募集しています。

  • 血糖管理に関心のある健康関連企業
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少しでもご興味のある方は、お気軽にご連絡ください。

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