AIを駆使することで見えてきた可能性、そして今後の課題
失敗と試行錯誤を重ねた五行ドクター開発チームは、従来の方法では血糖値を正確に予測できないと痛感しました。そこで、AI技術のより積極的に利用する方向に舵を切りました。しかし、AIは万能ではなく、思い通りの結果を得るには多くの難題が待ち受けていました。

1. AIの導入 – 予想以上に複雑だった血糖値の動き
従来の回帰分析では捉えられなかったパターンを学習するために、AIに教えてもらい、サポートベクターマシン(SVR)やニューラルネットワーク(MLP)を活用しました。これらを活用することで、血糖値の変動パターンをより正確に捉えることができるのではと考えました。しかし、ここでも問題が発生しました。トレーニングデータに対しては高精度な予測ができるものの、新しいデータには対応できない「過学習」の状態に陥ってしまいました。AIに期待しすぎた結果、現実のデータに対する適応力を欠いてしまったようです。
「AIに血糖値の動きの法則を理解させるには、もっと適切な別な方法があるのでは?」
そこで再度AIに聞いて、次に取り組んだのが、「特徴量選択」という方法でした。
2. 必要な情報だけを抽出する「特徴量選択」
血圧や血流のデータには多くの要素が含まれますが、すべてが血糖値に影響するわけではありません。むしろ、不要な情報が多すぎるとAIは混乱し、誤った学習をしてしまうことが分かりました。
「全部のデータを入れればいいというわけではない」
ということも試行錯誤の上、見えてきました。そこで入手した3500人のVitalデータで必要なVital情報だけを絞り込んで、再度AIに学習させました。
次にAIが勧める「ElasticNet(L1 + L2正則化)」という統計手法です。これを使うことで、血圧や脈圧、心拍出量のような基本的なパラメータに加え、脈圧 × 心拍出量のような掛け合わせのデータが血糖値の変動と深く関係していることが分かりました。
しかし、新たな問題が浮上します。
「特徴量の数を増やしすぎると計算が膨大になりすぎてしまう…」
そこで次の手段として、AIが勧めるそこで「ランダムフォレストを使ったアンサンブル学習」を試しました。
ランダムフォレストを使ったアンサンブル学習法を使い、再度AIでVitalデータを計算させました。
3. ランダムフォレストとアンサンブル学習 – AIを組み合わせて強化する
「1つのAIモデルに頼るのではなく、複数のモデルを組み合わせればもっと精度を向上できるのでは?」
ランダムフォレストは、複数の決定木(データの特徴ごとに「はい・いいえ」のように分岐する予測モデル)を組み合わせた強力な械学習手法です。異なるパターンを持つデータに対しても対応でき、過学習しにくい特性を持っています。
さらに、異なるAIモデルを組み合わせる「アンサンブル学習」を使い、それぞれの強みを活かして予測精度を高めました。
この方法により、高血糖の人の予測精度が大幅に向上し、低血糖の誤差も大きく改善されることが分かりました。しかし、さらなる最適化が必要でした。
4. ベイズ最適化によるパラメータ調整 – 最適な解を自動で見つけ出せ
血糖値推定の数式モデルを改善する上で、ハイパーパラメータの調整は欠かせません。しかし、パラメータを試行錯誤しながら手動で調整するのは時間がかかりすぎます。
そこでAIが導入したのがベイズ最適化です。ベイズ最適化を用いることで、無駄なく最適なパラメータを自動で見つけ出すことができました。
結果として、
- 過学習を防ぎながら精度を向上させる
- 低血糖と高血糖の予測精度をバランスよく最適化できる
- 少ないデータセットでも効率的に学習できる
という大きな成果が得られたようです。
5.今後の展望 – さらなる精度向上へ
ここまでの試行錯誤を経て、血圧測定から血糖値を推測する技術は着実に進歩しました。目標は実測値との誤差10%で、将来的にスマートウォッチで実装されるかもしれない血糖値計測方法より高性能かつ低コストの測定法の確立です。例えば、現在、Apple、Samsung、Huaweiといった企業が、それぞれ異なるアプローチで非侵襲的(体に針を刺したり、血を採ったりしない)血糖値測定技術を研究しています。
- Appleは、「吸収分光法」を用いて、皮膚に光を照射し、その反射データを分析する方法を研究中です。
- Samsungは、AI技術を活用した血糖値モニタリングの可能性を探求しており、Galaxy Watchシリーズへの搭載が期待されています。
- Huaweiは、「Watch 4」に高血糖リスクを評価する機能を搭載しましたが、これは直接血糖値を測定するものではなく、心拍数や脈波特性からリスクを算出する方式です。当社の技術と考え方が似ている心拍数や脈波から血糖値を推測する方式です。
いずれの技術も精度や信頼性の向上が課題であり、さらなる研究が続けられています。当然ながら“超弱小企業”である当社の血糖値推定技術も実用化には多くの課題があります。
6.個人差を考慮した予測モデルの構築
現在のモデルは全体的な傾向を学習するものの、個人ごとの違いにはまだ対応しきれていないという問題があります。たとえば、同じ血圧と脈圧の人でも、生活習慣や遺伝的要因によって血糖値の動きは異なります。
この課題を克服するために、
- 個人の過去の血糖値データを活用したカスタマイズモデルの開発
- 食事、運動、ストレスといった要因を統合した予測システムの構築
が必要と考えています。
「血圧を測るだけで血糖値を推測する」—— これはまだ研究開発の途中ですが、少しずつ可能性が見えてきています。
私たちの目標は、医療機器ではないけど一般の人々が日常的に血糖値の目安をコストがかからず知ることができ、糖尿病リスクを劇的に減らすことです。
Part3 では、実際の計算結果、血糖値の実測定値VS推定値、およびその誤差などの結果を、実データを示しながら解説します。
Part1 の記事はこちら https://x.gd/FlHG8
Part3 の記事はこちら
血糖値推定技術研究のJourneyは資金が続く限り続けていくつもりです。(笑)
この技術を一緒に育ててくれるパートナーを募集しています
この研究はまだ完成ではありません。しかし、ここまでの成果は、非侵襲的な血糖モニタリング技術として実用化の大きな一歩となるものでした。今後、スマートウォッチや体組成計との連携、健康食品との連携、企業の健康経営プログラム、生活習慣病予防アプリへの実装など、あらゆる活用の可能性があります。
現在、この技術をともに育て、社会に広めてくれる協業・支援パートナー企業を募集しています。
- 血糖管理に関心のある健康関連企業
- AIを活用した新サービスを構築したい健康食品、健康サービス企業
- 医療DXやウェアラブルヘルスに取り組む技術会社
少しでもご興味のある方は、お気軽にご連絡ください。
血圧測定結果から未病や美肌のセルフチェックできる五行ドクターはこちら https://gogyou-doctor-prod.web.app/
五行ドクターの使い方動画(30秒)はこちらhttps://www.youtube.com/shorts/BiuBFwzIaRI