2026年7月19日、ニューヨーク・ニュージャージー・スタジアムでは、スペインとアルゼンチンによるFIFAワールドカップ決勝が行われました。世界中が注目する試合では、約8万人の観客がスタジアムで見守ります。
では、もし、サッカーの試合中、突然スタンドが揺れ始めたら、私たちはどう動けばよいのでしょうか。
真っ先に出口へ向かうべきなのか。それとも、座席にとどまるべきなのか。そもそも、巨大なスタジアムはどの程度の震度まで耐えられるのでしょうか。
今回は、気象庁の震度解説、国土交通省の耐震基準、観覧施設の避難研究をもとに、サッカー場の近くで地震が起きた場合を仮想的に考え、AIで耐震性や対策方法を検証します。
ただし、スタジアムの構造、建設時期、地盤、震源の深さ、揺れの方向や長さによって被害は変わります。個別の施設について「震度いくつまで絶対に壊れない」と判定するには困難なため、一般的中堅スタジアムを想定しました。

どれくらいの震度ならスタジアムは壊れないのか
最初に知っておきたいのは、「建物が壊れないこと」と「建物が倒壊しないこと」は同じではないという点です。
現行の耐震基準に適合した建物は、数百年に一度程度の極めてまれな大地震に対して、主要構造部が直ちに倒壊・崩壊しないことを基本的な目標としています。しかし、これは壁、天井、照明、ガラス、配管などに一切被害が出ないという意味ではありません。
一般的な目安として、震度4程度で現代のスタジアムの主要構造部が大きく損傷する可能性は低いと考えられます。ただし、吊り下げ式の看板や照明などが揺れ、観客が驚いて動き始める可能性があります。
震度5弱になると、多くの人が恐怖を感じ、固定されていない物が移動したり倒れたりします。震度5強では、物につかまらないと歩きにくくなり、窓ガラスや外装材、天井材などが落下する危険も高まります。気象庁の資料では、大規模な空間では震度5強程度でも天井材が落下する場合があるとされています。
そのため、比較的新しいスタジアムであれば、震度5弱から5強で建物全体がすぐに倒壊する可能性は一般に低いものの、「施設内にいれば安全」とは言い切れません。
震度6弱以上では、建物や設備への被害が増えます。主要構造部が残っていても、天井、照明、大型ビジョン、外壁、ガラス、配管などが損傷し、試合の続行は困難になります。震度6強から7では、耐震性能や地盤条件によって重大な損傷が生じる可能性があり、専門家による安全確認が終わるまで施設を使用すべきではありません。
つまり、「震度5強までは安全、震度6弱から危険」と単純に線を引くことはできません。スタジアムでは、建物の倒壊だけでなく、落下物、停電、火災、観客の集中による転倒にも注意が必要です。
強い地震が起きたら、どうすれば助かるのか?
仮に試合中、震度5強以上の強い揺れが始まったとします。
このとき、最も危険なのは、何万人もの観客が同時に出口へ向かうことです。大規模集客施設では、停電や火災、情報不足が重なると混乱が起きやすく、出口や階段に人が集中すれば集団転倒につながるおそれがあります。
揺れている最中は、すぐに走り出さず、まず姿勢を低くします。座席の背や手すりを利用し、バッグや腕で頭と首を守ります。
大型ビジョン、照明、ガラス、看板、屋根の端など、落下物が考えられる場所の真下は避けたいところですが、強く揺れている途中で階段や通路を移動する方が危険な場合もあります。
揺れが収まった後は、場内放送と係員の指示を確認します。施設側は、火災、損傷、余震の状況を確認しながら、観客席の区画ごとに避難を始めると考えられます。
避難するときは、近いからという理由だけで一つの出口に集中せず、案内された経路を使います。観覧施設の避難実験でも、複数の人の流れが一つの出口前で合流すると、廊下や階段に滞留が起きやすいことが確認されています。
屋外へ出た後も、スタジアムの外壁、照明塔、電柱、ガラス面から距離を取ります。鉄道や道路が止まっている場合は、無理に帰宅せず、施設や自治体の案内に従うことも必要です。
地震発生時に避けるべきNG行動
1つ目は、揺れ始めた瞬間に出口へ走ることです。
観客が一斉に動けば、狭い通路や階段で転倒が起きます。前方の人が倒れると、後ろの人は止まりきれません。
2つ目は、手すりを越えてピッチへ飛び降りることです。
高さがある観客席からの転落は大けがにつながります。ピッチが広く見えても、途中の柵や段差、機材が避難を妨げる可能性があります。
3つ目は、荷物を取りに戻ることです。
余震や火災が発生する可能性があるため、避難開始後に座席へ戻ってはいけません。
4つ目は、エレベーターを利用することです。
大規模な集客施設では、地震によりエレベーターの閉じ込めが多数発生する可能性が想定されています。
5つ目は、未確認の情報を信じて勝手に行動することです。
「屋根が崩れる」「別の出口が閉鎖された」などの情報がSNSで広がっても、場内放送や係員、公的機関の案内を優先します。
スタジアムで命を守る基本は、揺れている間は身を守り、揺れが収まってから指示に従い、走らず避難することです。
地震が起きる前に準備できること
試合会場に入ったら、座席に着く前後に最寄りの出口を確認しておくと安心です。
スマートフォンの充電状態、家族や同行者との集合場所、座席番号、入場ゲートも記録しておきます。地震後は通信が集中する可能性があるため、長電話ではなく短いメッセージで安否を伝える方法も決めておくと役立ちます。
地震が起きた瞬間にできることは限られています。しかし、事前に避難経路を知っていれば、周囲が混乱しても落ち着いて判断しやすくなります。
このように、地震の可能性を事前に知る意味は、恐怖をあおることではなく、避難方法や連絡手段を先に確認できることにあります。
次に、2026年7月12日から21日までに東日本で観測された最新の前兆波についてお伝えします。
富山県観測所では前兆波を確認せず
今回の観測期間中、富山県東部の観測所では、前兆波と判断される波形は確認されませんでした。
高島式地震予知の解析では、現時点で首都圏直下の大規模地震を示唆する兆候はありませんでした。
ただし、前兆波が観測されていないからといって、「首都圏直下地震は起こらない」と断定することはできません。今回の観測期間と観測方法の範囲では、該当する兆候が確認されなかったという意味です。
気象庁も、現在の科学では地震の日時、場所、規模を確度高く予測することは難しいと説明しています。
埼玉・鈴谷観測点で133秒の前兆波を観測
埼玉県南部の鈴谷観測点では、7月14日に2つの前兆波が観測されました。
1回目は午前10時2分、2回目は午前11時6分です。
解析では、この2つの波形が同じ地震に対応している可能性があると見ています。
観測結果は次のとおりです。
・総持続時間:133秒
・周波数:12.8Hz、12.8Hz
・最大振幅:171mVp-p
解析上の推定は次のとおりです。

・地震発生予想日:7月21日±5日
・震源:鈴谷観測点から150km以内
・規模:M3~4クラス
・鈴谷周辺の揺れ:震度2~3程度
・発生確率:高島式解析上の推定値で80%
前週に観測された107秒の前兆波よりも持続時間が長く、最大振幅も比較的大きな記録です。
ただし、133秒という長さや171mVp-pという振幅だけで、大きな地震が起きると判断することはできません。
今回の解析では、鈴谷から150km以内で発生するM3~4クラスの地震を想定しています。
観測データを防災行動につなげる
M3~4クラスは巨大地震ではありませんが、震源が浅く都市部に近ければ、体に感じる揺れになることがあります。
交通機関の安全確認、エレベーターの停止、棚から物が落ちるといった影響が出る場合もあります。
サッカースタジアムでも、家庭でも、地震発生時に重要なのは、揺れの大きさだけではありません。建物、地盤、周囲の人数、発生時間、避難経路によって危険性は変わります。
地震の情報は、試合観戦や外出を控えさせるためのものではありません。
会場に着いたら出口を確認する。家庭では家具を固定する。家族との連絡方法を決める。スマートフォンを充電しておく。そうした小さな準備を始めるきっかけとして、観測結果を活用することが大切です。
高島式地震予知に関するお問い合わせ先
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