南海トラフの内閣府の発表によると、首都直下地震は今後30年以内に発生する確率が70%と高く、南海トラフ地震は80%とされています。これらはいずれも東日本大震災を超えるとても大きな被害が想定されており、日本社会にとって最大級のリスクといえます。
実際に地震が首都圏を直撃した場合、ビル群が大きく揺れ、道路には亀裂が走り、倒壊した高速道路や炎上する車が街を混乱に陥れるでしょう。遠くには津波が迫り、私たちの生活基盤が一瞬で崩れ去る現実を突きつけてきます。

南海トラフの首都直下地震で地面が割れている都内

南海トラフ地震が起きた場合の想定

南海トラフは、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込む境界であり、歴史的にも繰り返し巨大地震を発生させてきました。政府の中央防災会議が示す最新の被害想定によれば、もし南海トラフでM8〜M9級の地震が発生すれば、津波による死者は最大32万人、住宅被害は最大238万棟に達すると見込まれています。また、太平洋沿岸を中心に長期間の停電や断水が発生し、経済被害は1410兆円に上ると推定されています。

特に津波の脅威は深刻です。南海トラフ地震の特徴は、震源が海溝沿いに広範囲で同時に破壊されることで、数十分以内に太平洋岸を津波が襲う点にあります。過去の宝永地震や安政東海地震の記録からも、津波による被害が広域に及んだことが分かっています。高知、和歌山、三重などの沿岸部では20メートルを超える津波が到達する可能性があり、内陸部の都市もとても大きな被害を免れません。

さらに、ライフラインへの影響も甚大です。首都圏や関西圏では、電力網や上下水道が広範囲で停止し、交通インフラも麻痺すると見込まれています。物流が止まり、医療機関や行政機能が長期間にわたって混乱することで、社会全体の立て直しに数十年を要する可能性も指摘されています。

このように、南海トラフ地震は「一地方の災害」にとどまらず、日本全体の私たちの生活や経済を大きく揺るがす「国家存亡の危機」と言えるのです。しかもその発生確率は30年以内に80%と極めて高く、「いつ起きても不思議ではない」という差し迫った危険が専門家から繰り返し指摘されています。

9月の地震予知解析結果

一方で、従来「予知不可能」とされてきた地震に対し、新たな科学的アプローチが注目されています。それが「前兆波観測」に基づく地震予知技術です。地震が発生する直前、岩盤内で破壊核が形成される際に微細な信号(破壊核形成信号=前兆波)が放出されることが分かってきました。この前兆波を専用の観測装置で捉えることで、1〜15日先の地震発生を推定する試みが進められています。

仙台市と埼玉県南部での解析

2025年9月20日〜28日に仙台観測点で解析を行った結果、前兆波は観測されませんでした。これは、当該期間に仙台周辺で有意な地殻活動が確認されなかったことを示しています。

一方、埼玉県南部の鈴谷観測点では、9月25日と26日に前兆波が記録されました。

〇9月25日 14時03分:持続時間42秒、周波数12.3Hz/9.9Hz、最大振幅46mVp-p

2025年9月25日14時03分に観測された前兆波

図1:2025年9月25日14時03分に観測された前兆波(鈴谷)

〇9月25日 18時27分:持続時間49秒、周波数11.9Hz/9.6Hz、最大振幅33mVp-p

2025年9月25日18時27分に観測された前兆波

図2:2025年9月25日18時27分に観測された前兆波(鈴谷)

この2件は同一の地震に関連する前兆波と推定されています。解析の結果、10月3日±5日に震源が鈴谷から150km圏外でM4クラスの地震が発生する可能性が80%とされました。予想される揺れは鈴谷で震度1程度に留まると見込まれています。

さらに、9月26日 10時23分には別の前兆波が観測されました。持続時間27秒、周波数11.2Hz/10.2Hz、最大振幅28mVp-p。この信号は鈴谷直下の小規模な活動を示すもので、10月4日±5日にM3クラスの地震が発生する可能性が80%とされています。こちらは震度1未満の揺れが予想されます。

2025年9月26日10時23分に観測された前兆波

図3:2025年9月26日10時23分に観測された前兆波(鈴谷)

アウターライズ地震の予兆

また、北緯37.5度・東経144.5度付近の太平洋プレート上でアウターライズ地震の震源予想も示されています。ここ3〜4日間にわたり多数の微小地震が確認されており、仙台観測点に特徴的な前兆波が現れる可能性があります。ただし、9月28日時点では仙台での今のところ観測では出ていません。

前兆波とプレート境界の法則

観測事例の蓄積から、前兆波と実際の地震発生には一定の法則が見えてきました。太平洋プレート由来の地震は前兆波観測から15日以内、フィリピン海プレート由来の地震は45日以内に発生する傾向が確認されています。今回の鈴谷での観測結果も、まさに太平洋プレート由来の小規模地震に合致するものと考えられます。

アウターライズ地震の震源地予想

図4:アウターライズ地震の震源地予想(2025年9月)

結論

内閣府が示すように、南海トラフ地震や首都直下地震は極めて高い確率で迫っている現実のリスクです。その一方で、最新の前兆波観測は、短期的な地震発生を高い精度で示唆する具体的データを積み重ねています。

9月に観測された鈴谷での複数の前兆波は、10月上旬の小規模な地震発生を予測する重要な兆候です。これは「地震をまったく予測できない時代」から、「科学的根拠に基づき一定の範囲で推定できる時代」への転換点を示しているといえるでしょう。

【関連リンク】
◎ 高島式地震予知の解説記事一覧:https://liquiddesign.co.jp/category/blog/earthquake/
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