首都圏の地下で見つかった「断片化したプレート構造」

産業技術総合研究所(産総研)は2024年9月、「首都圏直下に潜むプレートの断片(フラグメント)」を発見したと発表しました。
産総研:首都圏直下に潜むプレートの断片と地震発生

同研究では、フィリピン海プレートの一部が関東平野の地下に取り残され、通常のプレート運動とは異なる独立した動きをしていることが明らかにされています。この「断片プレート」は、プレート同士が押し合う境界付近で応力が集中しやすく、局地的な地震活動の震源帯になっていることが分かっています。特に埼玉県南部から茨城県南部にかけての地域では、深さ30〜50km付近にこの断片構造が存在し、地震発生の要因として注目されています。そして、11月に高島式地震予知の最新解析で、このフラグメントが活動しているとみられる埼玉県南部(鈴谷観測点)で明瞭な前兆波が検出されました。

高島式地震推定技術が捉えた前兆波

この産総研の報告と同時期に、高島式地震推定技術による観測で、同じ地域における地殻変動の兆候が記録されました。高島式地震予知は、建物の共振構造を利用して地面から伝わる微弱な振動を1000倍以上に増幅し、通常の地震計では捉えられない“破壊核形成信号”を検出する技術です(特許第6995381号)。
この信号は、地震の発生前に地下で生じる「応力集中の解放準備段階」で発生し、太平洋プレートではおおむね15日以内、フィリピン海プレートでは約45日以内に発震が確認されることが多いとされています。

今回の観測では、埼玉県南部・鈴谷でこの「破壊核形成信号」と一致する複数の前兆波が検出されました。これらの波形データは、産総研が指摘した「プレート断片の活動域」と位置的にも、周波数特性(10〜13Hz)においても高い相関関係を示しています。

仙台と埼玉県南部・鈴谷観測点での解析結果(10/25〜11/02)

仙台観測点 ― 前兆波の検出なし

10月25日〜11月2日の期間、宮城県仙台の観測点では明確な前兆波は観測されませんでした。宮城県仙台の観測装置では、10月25日〜11月2日の間に地震の前兆となる波形は確認されませんでした。装置は1階から2階に移設されたため、今後は感度の変化を考慮して再調整を進める予定です。

鈴谷観測点 ― 埼玉県南部で複数回の前兆波を検出

埼玉県南部の鈴谷観測点では、10月27日、10月31日、そして11月2日に、地震の前触れとみられる特徴的な波形(前兆波)が3回検出されました。特に10月27日の信号は大きく、地殻の深部で応力が高まっていることを示しています。


以下は解析結果の詳細です。

【第1波】10月27日 14時03分

  • 持続時間:76秒
  • 主要周波数:13.3Hz/9.7Hz
  • 最大振幅:207 mVp-p
  • 想定地震:11月4日±5日
  • 発生確率:80%
  • 予想規模:埼玉県南部直下 M4クラス(震度3〜4)

この波形は大振幅で、地殻内部に急激な応力集中が生じた可能性を示唆します。13Hz付近の高周波成分が顕著であり、典型的な破壊核形成信号の特徴を持っています。

【第2波】10月31日 10時11分

  • 持続時間:84秒
  • 主要周波数:12.1Hz/10.7Hz
  • 最大振幅:29 mVp-p

この信号の特性は、11月2日に発生した茨城県南部の地震(M3.5/深さ約40km)と一致しました。地震の発生地点は、産総研の報告で示された「断片プレートの上端部」と重なっており、観測データの整合性が確認されています。

【第3・第4波】11月2日 8時30分/13時54分

  • 8:30波:持続82秒/主要周波数13.3Hz・10.2Hz/最大振幅146 mVp-p
  • 13:54波:持続59秒/主要周波数13.1Hz・10.1Hz/最大振幅181 mVp-p
  • 総持続時間:141秒
  • 想定地震:11月10日±5日
  • 発生確率:80%
  • 予想規模:埼玉県南部直下 M4クラス(震度2〜3)

両波は周波数構成がほぼ一致しており、同一地震活動に関係する信号群と判断されます。いずれの波形も共通して13Hz付近に強いピークがあり、産総研が報告する「関東フラグメント(断片プレート)」の活動域と一致しています。

左第3波                           右第4波

 

産総研の報告と観測結果の一致

今回の鈴谷観測点の位置は、産総研が公開した「フィリピン海プレート断片の先端域」とほぼ重なります。同報告によると、関東平野直下ではこの断片が本体プレートと擦れ合うことで、応力が繰り返し蓄積・解放される構造になっています。高島式地震推定装置による波形解析では、この領域で断続的に現れる13Hz前後の信号が、その応力変化を直接反映していると考えられます。特に10月31日の観測では、産総研が発表した「プレート断片の上端部」と重なる領域で実際に地震が発生。これは理論と観測が一致する明確なケースの一例となります。

今後の予測と解析

今後1〜2週間は、埼玉県南部を中心に中規模(M4クラス)の地震が起きやすい状態が続くと見られます。現時点で観測された波形は、産総研が指摘する首都圏直下の「プレート断片(フラグメント)」の活動域と一致しており、地殻の応力変化をとらえた重要なデータといえます。高島式地震予知研究所では、これらの観測結果をもとに、今後も首都圏直下の地殻変動を継続的に記録・解析し、当BLOGを通じてその経過をお知らせしていきます。また、将来的に産総研の構造解析と高島式前兆波観測を組み合わさることで、首都圏直下地震の発生プロセスをより科学的に解明する手法を見つけていきたいと考えています。

【関連リンク】
◎ 高島式地震予知の解説記事一覧:https://liquiddesign.co.jp/category/blog/earthquake/
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