ゴールデンウィーク期間中はいつもとは異なる記事を掲載します。本期間では以前当BLOGでも紹介した(https://liquiddesign.co.jp/information/new-vital-sensor-businesss-idea/)、当社のベビーセンサー・介護センサーに活用されているLDS-T6B空気動圧センサーの技術について、3回に分けて解説します。
以下記事の概要です。
1回目 【基礎編】Infrasonicセンシングとは何か(4月28日)
―非可聴領域で空間を測る新しいセンサー技術―
2回目 【比較編】Infrasonicセンサーの優位性(5月4日)
―カメラ不要・個人情報不要・少数センサーで広域検知―
3回目 【実用編】Infrasonicセンシングの導入とROI(5月8日)
―建物管理・介護・バスでの活用と費用対効果―
本記事では、LDS-T6B空気動圧センサーを使ったInfrasonic(非可聴領域)センシングについて解説。従来のセンサーとの違いや、なぜ今この技術が注目されているのかを、できるだけわかりやすく説明します。
これまでのセンサーは、「何かが起きた瞬間」を捉えることを目的としたものが中心でした。
しかし実際の現場では、「起きる前の変化」や「空間全体の違和感」を把握することが求められています。
こうしたニーズに応える手法として、Infrasonicセンシングが注目されています。

Infrasonicとは何か
Infrasonicとは、一般に20Hz以下の低周波領域を指します。
人間の耳では聞こえませんが、空気中には常に存在している物理現象です。
この低周波には、他のセンサーにはない重要な特性があります。
まず、波長が極めて長いという点です。
例えば1Hzの波は、数百メートル規模の波長になります。
このため、以下のような特徴を持ちます。
・壁や家具の影響をほとんど受けない
・空間全体に広がる
・減衰しにくく長時間持続する
つまりInfrasonicは、「ある一点」ではなく、「空間全体の状態」を捉えるのに適した信号だといえます。
なぜ空間全体を捉えられるのか
一般的なセンサーは、特定の位置での変化しか検知できません。しかしInfrasonicは違います。
空間内で発生するあらゆるイベントは、微弱であっても空気の圧力変動として広がります。
例えば、
・人が歩く
・ドアを開ける
・窓が開く
・外気が流入する
これらはすべて、空気の密度や流れを変化させ、微小な圧力変動(空気の揺らぎ)を発生させます。
重要なのは、この変動が「その場だけで終わらない」ことです。
低周波であるため、圧力変動は空間全体に伝播します。つまり、1か所に設置したセンサーでも、空間全体の変化を間接的に捉えることができます。
単なるノイズではなく「意味のある信号」
Infrasonicの圧力変動は、一見するとノイズのように見えます。
しかし実際には、動きごとに異なる特徴を持っています。
例えば、
・人の移動 → ゆっくりとした周期的な変動
・ドアの開閉 → 緩やかな圧力変化
・ガラスの破損 → 瞬間的で鋭い変動
このように、それぞれの現象には固有のパターンがあります。
つまり、時間特性・周波数特性・変化の立ち上がり方がそれぞれ異なります。
そのため、単に「強いか弱いか」だけで判断するのではなく、
・どのくらい続くのか
・どの周波数帯か
・どのように変化するか
といった複数の要素を組み合わせることで、空間内で起きている現象を見分けることができます。
なぜ「見えない」のに有効なのか
これまでのセンサーは、「見えるもの」や「聞こえるもの」を中心に扱ってきました。
ただし、それにはいくつかの制約があります。
・カメラ:死角がある、プライバシーの問題がある
・赤外線:検知できる範囲が限られる
・マイク:周囲の音に影響されやすい
一方、Infrasonicは空気の圧力変化を扱うため、これらの制約を受けにくい特徴があります。
空間全体に広がるため、死角がほとんどありません。
また、映像や音声を取得しないため、個人情報を扱わずに検知できます。
この特性により、
・保育園や介護施設
・住宅やオフィス
・公共空間や交通機関
といった、プライバシー配慮が求められる環境でも導入しやすいセンサー技術となっています。
なぜ今、注目されているのか
Infrasonicセンシングが注目されている背景には、主に4つの理由があります。
1. 従来センサーの限界
点で検知する方式では、空間全体の変化を捉えにくいという課題があります。
2. 兆候を捉えるニーズの増加
異常が起きてからではなく、起きる前の変化を検知することが求められています。
3. 非接触・非侵襲への要求
医療・介護・保育・セキュリティ分野では、
・触れない
・負担をかけない
・意識させない
4. センサー技術の進化
従来は、低周波の微小な圧力変動を安定して取得することが難しいという課題がありました。
しかし現在では、空気動圧センサーの進化により、0.5Pa程度の微弱な圧力変動まで検出可能になっています。
これにより、理論ではなく「実用技術」として成立する段階に入っています。
LDS-T6Bセンサーで非可聴域をセンシング
ここまで説明したInfrasonicセンシングは、理論だけでは成立しません。
実際に空間の微小変動を捉えるためには、高感度なセンサーが必要です。
そこで重要になるのが、空気動圧センサーLDS-T6Bです。
空気動圧センサーLDS-T6Bは、空気中の微小な圧力変動を高感度に検出するピエゾ式センサーであり(特許第7710729号)、音ではなく空気の圧力変化そのものを直接計測する点に特徴があります。
一般的なマイクロフォンが可聴領域を対象とするのに対し、LDS-T6Bはより低周波領域まで応答するため、呼吸や空間内の緩やかな圧力変動といったInfrasonic帯域の現象を検出できます。
また、動圧成分の検出に最適化された構造により、静圧の影響を抑えつつ、時間変化する圧力に対して高いS/N比を確保しています。これにより温度変化や環境ドリフトの影響を受けにくく、安定した計測が可能です。
さらに、広帯域の周波数応答を持つため、低周波の生体信号から中周波の機械振動までを単一センサーで取得できます。実環境において複数の現象が重なる状況でも、統合的な解析が可能です。
構造面ではシールド設計により外部ノイズを抑制し、0.5Pa程度の微小な圧力変動も検出可能です。小型・軽量で設置自由度が高く、空間特性に応じた柔軟な配置にも対応できます。
従来のセンサーでは困難だった低周波領域の安定取得を実現した点が、Infrasonicセンシングを実用化する鍵となっています。

まとめ
Infrasonicセンシングは、空気のわずかな揺らぎから空間の状態を読み取る技術です。
・点ではなく空間全体を捉える
・非接触で広い範囲をカバーできる
・個人情報を扱わずに検知できる
といった特徴があります。
これにより、これまでのセンサーでは難しかった用途にも対応できるようになります。
今後は、見守りやセキュリティ、交通分野などでの活用が進むと考えられます。
センサーに関するお問い合わせは下記へ
株式会社リキッド・デザイン・システムズ
センサー共創ビジネス担当 info@liquiddesign.co.jp
製品仕様書:https://liquiddesign.co.jp/wp-content/uploads/2025/10/LDS-VitalSensor-spec.pdf
地震前兆検知への応用について
空気動圧センシングは、生体計測や空間センシングにとどまらず、地震に関連する微弱な環境変動の観測にも応用されています。建物内で観測されるごく小さな圧力変動や共振現象を捉えることで、地震発生前に現れる変化の把握を試みる技術であり、この考え方に基づく地震推定技術は特許第6995381号として成立しています。また、「地震破壊核形成信号の遠隔観測技術」として学会でも発表されています。当社ではこの技術を応用し、毎週地震予知に関する解析記事を公開しています。詳しくは以下をご覧ください。
https://liquiddesign.co.jp/category/blog/earthquake/

