ゴールデンウィーク期間中はいつもとは異なる記事を掲載します。本期間では以前当BLOGでも紹介したhttps://liquiddesign.co.jp/information/new-vital-sensor-businesss-idea/)、当社のベビーセンサー・介護センサーに活用されているLDS-T6B空気動圧センサーの技術について、3回に分けて解説します。

以下記事の概要です。

1回目 【基礎編】Infrasonicセンシングとは何か(4月28日)
―非可聴領域で空間を測る新しいセンサー技術―

2回目 【比較編】Infrasonicセンサーの優位性(5月4日)
―カメラ不要・個人情報不要・少数センサーで広域検知―

3回目 【実用編】Infrasonicセンシングの導入とROI(5月8日)
―建物管理・介護・バスでの活用と費用対効果―

前回は、Infrasonic(非可聴領域)センシングがどのような技術なのか、その基本的な仕組みを整理しました。空気のわずかな圧力変動を利用して、空間の状態を間接的に把握するというアプローチです。

今回はその続きとして、従来のセンサーと比較したときに、この技術がどこに違いがあり、なぜ優位性があるのかを具体的に掘り下げていきます。特に「カメラ不要」「個人情報不要」「少数センサーで広域カバー」という3つの観点から整理します。

従来センサーの前提

まず、比較の前提として従来のセンサーの特徴を整理しておきます。

現在広く使われているセンサーの多くは、「特定の場所」で発生するイベントを検知する仕組みです。例えば、赤外線センサーは人が通過したかどうかを検知し、ドアセンサーは開閉の有無を直接検出します。カメラは視野内の映像を取得し、その中から対象を認識します。

いずれも共通しているのは、「その場所で何が起きたか」を捉える点です。言い換えれば、空間を細かく分割し、それぞれのポイントにセンサーを配置して監視する構造です。

この方式は分かりやすく確実性も高い一方で、次のような制約を持ちます。

・死角が発生する
・カバー範囲を広げるとセンサー数が増える
・空間全体の変化を直接捉えられない

つまり、点の集合として空間を把握する方法であり、構造的に限界があります。

Infrasonicセンサーの考え方

これに対してInfrasonicセンサーは、まったく異なる前提で動作します。

検知する対象は「場所」ではなく、「空間に広がる変化」です。

人の移動やドアの開閉といった現象は、必ず空気に影響を与えます。空気の流れや密度が変化し、それが圧力のわずかな変動として現れます。この変動は非常に小さいため人間には感じられませんが、物理的には確実に存在しています。

さらに重要なのは、この変動が低周波成分として空間全体に広がる点です。Infrasonic領域は波長が長く、障害物の影響を受けにくいため、局所的な変化であっても空間全体に伝播します。

このため、空間の一部で起きた出来事であっても、空間全体の圧力状態の変化として観測することができます。ここに従来センサーとの本質的な違いがあります。

優位性① カメラ不要

この技術の分かりやすい特徴の一つが、カメラを必要としない点です。

カメラは情報量が多く、対象の識別には非常に有効です。しかしその一方で、視野に依存するという根本的な制約があります。どれだけ配置を工夫しても、死角を完全に排除することは難しく、照明条件や遮蔽物の影響も受けます。

これに対してInfrasonicセンシングは、視野という概念を持ちません。空気の圧力変動を扱うため、見える・見えないに関係なく、空間全体の状態を捉えます。

例えば、人が視界に入っていなくても、その移動によって生じる圧力変動は空間に広がります。その変化を検出することで、結果として人の存在や動きを把握することができます。

これは単にカメラを置き換えるという話ではなく、「空間そのものを測る」というアプローチへの転換です。

優位性② 個人情報を扱わない

次に重要なのが、個人情報の扱いです。

カメラやマイクは、映像や音声という形で情報を取得します。これらは解析次第で人物の特定や行動の詳細な把握が可能であり、その分だけプライバシーへの配慮が必要になります。

一方、Infrasonicセンサーが取得するのは、あくまで圧力の時間変化です。そこから分かるのは、変動の大きさや周期、持続時間といった物理的な特徴だけです。

つまり、

・誰がいるか
・どんな顔をしているか
・何を話しているか

といった情報は一切含まれません。

この特性は、技術的な制約ではなく、測定対象そのものが異なることに起因します。結果として、プライバシーに配慮しながら空間の状態を把握できるという大きな利点につながります。

特に保育施設や介護施設など、個人情報の取り扱いに慎重な環境では、この点が導入の判断に大きく影響します。

優位性③ 少数センサーで広域カバー

もう一つの大きな違いは、センサーの数です。

従来方式では、空間を分割してカバーする必要があるため、対象範囲が広がるほどセンサーの数も増えます。例えば、倉庫全体を監視する場合、通路ごとにセンサーを配置したり、複数のカメラで死角を埋めたりする必要があります。

これに対してInfrasonicセンシングでは、空間を一つの物理系として扱います。圧力変動が空間全体に広がるため、複数のポイントを個別に監視する必要がありません。

例えば、

・住宅であれば各階に1台
・倉庫であれば空間に1台

といった構成でも、空間全体の変化を捉えることができます。

ここで重要なのは、「センサーを減らす」というよりも、「空間の捉え方を変える」ことです。点を積み上げて空間を再構成するのではなく、最初から空間全体を一つの対象として扱うことで、構成がシンプルになります。

なぜこの構成が成立するのか

このような構成が成立する理由は、Infrasonicの物理特性にあります。

低周波は波長が長いため、局所的な変化でも空間全体に影響を及ぼします。さらに、建物には固有の共振特性があるため、特定の周波数帯では圧力変動が増幅されることがあります。

この共振をうまく利用することで、非常に小さな変動でも観測しやすくなります。つまり、空間そのものがセンサーの一部として機能しているとも言えます。

LDS-T6Bとの関係

ただし、この仕組みを実際に成立させるには、微小な圧力変動を正確に検出できるセンサーが必要です。

LDS-T6Bは、そのために設計された空気動圧センサーです。低周波領域に対応し、空気の圧力変化を高感度で捉えることができます。

呼吸のような極めて小さな変動から、空間内の動きによる変化までを安定して取得できるため、Infrasonicセンシングの実用化を支える要素となっています。

まとめ

Infrasonicセンサーの優位性は、単なる性能差ではなく、考え方の違いにあります。

・カメラを使わずに空間を捉える
・個人情報を扱わずに状態を把握する
・少数のセンサーで広い範囲をカバーする

これらはすべて、「空間全体を一つの対象として扱う」という前提から生まれています。

従来のセンサーが「点での検知」を積み重ねていたのに対し、Infrasonicセンシングは「空間そのものを観測する」技術です。この違いが、そのまま優位性につながっています。

次回は、この技術が実際にどのような場面で使われるのか、具体的な導入シーンと活用方法について整理していきます。

センサーに関するお問い合わせは下記へ
株式会社リキッド・デザイン・システムズ
センサー共創ビジネス担当 info@liquiddesign.co.jp
製品仕様書:https://liquiddesign.co.jp/wp-content/uploads/2025/10/LDS-VitalSensor-spec.pdf

地震前兆検知への応用について

空気動圧センシングは、生体計測や空間センシングにとどまらず、地震に関連する微弱な環境変動の観測にも応用されています。建物内で観測されるごく小さな圧力変動や共振現象を捉えることで、地震発生前に現れる変化の把握を試みる技術であり、この考え方に基づく地震推定技術は特許第6995381号として成立しています。また、「地震破壊核形成信号の遠隔観測技術」として学会でも発表されています。当社ではこの技術を応用し、毎週地震予知に関する解析記事を公開しています。詳しくは以下をご覧ください。
https://liquiddesign.co.jp/category/blog/earthquake/