命題: 空間を「測る」技術はどこで価値を生むのか

ゴールデンウィーク期間中は通常とは異なる特集記事を掲載しています。以前当BLOGでも紹介したhttps://liquiddesign.co.jp/information/new-vital-sensor-businesss-idea/)、当社のベビーセンサー・介護センサーに活用されているLDS-T6B空気動圧センサーを軸に、Infrasonic(非可聴領域)センシングの可能性を3回に分けて解説しています。

1回目 【基礎編】Infrasonicセンシングとは何か(4月28日)
―非可聴領域で空間を測る新しいセンサー技術―

2回目 【比較編】Infrasonicセンサーの優位性(5月4日)
―カメラ不要・個人情報不要・少数センサーで広域検知―

本記事ではその最終回として、
【実用編】Infrasonicセンシングの導入とROI―建物管理・介護・バスでの活用と費用対効果―
を具体的な導入シーンから整理します。

なぜROIの視点が重要なのか

どれだけ優れた技術であっても、導入判断は最終的に「費用対効果」で決まります。

従来のセンサー導入では、次のような課題がありました。

・センサー数が増えコストが膨らむ
・設置・保守の手間が大きい
・プライバシー対応コストが発生する
・データは取れるが活用されない

つまり、
「技術的には可能でも、経済的に成立しない」
ケースが多かったのが実情です。

Infrasonicセンシングは、この構造を変えます。

・少数センサーで広域をカバー
・非接触で運用負荷が低い
・個人情報を扱わないため運用がシンプル
・空間の変化を継続的に取得できる

この結果、
初期コスト・運用コスト・リスクコストのすべてを下げながら価値を生む
という特徴を持ちます。

導入シーン① 建物管理(ファシリティマネジメント)

まず最も相性が良いのが、建物管理です。

従来の課題

建物管理では、次のような監視が必要になります。

・侵入検知
・設備異常
・空間利用状況
・環境変化

これらは通常、複数のセンサーで分散的に管理されます。

・カメラ
・人感センサー
・開閉センサー
・温湿度センサー

その結果、
システムが複雑化し、コストが増大する
という問題が発生します。

Infrasonicによる変化

Infrasonicセンシングでは、空間全体の圧力変動を取得するため、

・人の動き
・ドア開閉
・外気流入
・異常な振動

といった複数の現象を、一つの信号として統合的に取得できます。

つまり、
センサーを増やすのではなく、空間の状態をまとめて捉える
という発想に変わります。

ROIのポイント

・センサー数削減(設置コスト低減)
・配線・工事削減
・保守点数削減
・セキュリティと環境監視の統合

特に空き家・倉庫・地方施設など、
「従来のコストでは監視できなかった領域」で効果が大きくなります。

導入シーン② 介護・保育(見守り)

次に重要なのが、介護・保育分野です。

従来の課題

この分野では、
安全とプライバシーの両立が大きなテーマです。

・カメラ → プライバシー問題
・接触センサー → 利用者負担
・目視 → 人手不足

結果として、
完全な見守りはコスト的にも運用的にも困難でした。

Infrasonicによる変化

Infrasonicセンシングは、

・呼吸
・体動
・空間内の微小変化

を非接触で検出できます。

しかも取得するのは圧力変動のみであり、

・顔
・音声
・個人識別情報

は一切含まれません。

ROIのポイント

・見守り人員の負担軽減
・プライバシー対応コスト削減
・導入施設の信頼性向上

特に保育園では、
「安全対策+保護者への説明責任」
という観点で大きな価値を持ちます。

また介護施設では、
夜間見守りの効率化による人件費削減にも直結します。

導入シーン③ 交通(バス・移動体)

3つ目は交通分野、特にバスです。

従来の課題

近年問題となっているのが、

・置き去り事故
・車内確認の人的ミス
・センサーの死角

です。

カメラや重量センサーでは、
・死角
・誤検知
・コスト
の問題が残ります。

Infrasonicによる変化

車内という閉空間では、Infrasonicの特性が特に活きます。

・人が存在するだけで圧力変動が発生
・微小な動きでも検出可能
・座席位置に依存しない

つまり、
「どこにいるか」ではなく「存在しているか」を検知できます。

ROIのポイント

・事故防止(リスクコストの削減)
・確認作業の自動化
・センサー数削減
・シンプルな構成による故障リスク低減

特に重要なのは、
事故発生時の社会的・法的コストを大幅に下げられる点です。

これは単なる効率化ではなく、
経営リスクそのものを低減する投資といえます。

ROIの本質は「見えない価値」にある

ここまで3つの分野を見てきましたが、共通しているのは次の点です。

Infrasonicセンシングは、
「これまで取得できなかった情報」を低コストで取得できる
技術です。

従来は、
・コストが高すぎる
・プライバシー問題がある
・設置が困難

といった理由で諦めていた領域が対象になります。

ROIは単純なコスト削減だけではありません。

・事故防止
・リスク回避
・信頼性向上
・運用の簡素化

こうした
定量化しにくい価値を含めて初めて成立するROIです。

LDS-T6Bが実現する理由

これらの導入が成立する前提となるのが、
高感度センサーの存在です。

LDS-T6Bは、

・低周波領域対応
・微小圧力変動検出(約0.5Pa)
・動圧検出に最適化

といった特性により、

理論ではなく実用レベルでInfrasonicセンシングを成立させる
役割を担っています。

単なるセンサーではなく、
「空間を測るためのインターフェース」
と捉えるのが適切です。

まとめ

Infrasonicセンシングの価値は、技術単体ではなく、
導入したときに生まれる構造変化にあります。

・建物管理 → 少数センサーで広域監視
・介護・保育 → 非接触で安全とプライバシー両立
・交通 → 存在検知による事故防止

これらに共通するのは、

「空間を点ではなく全体として捉える」
という考え方です。

この発想の転換が、
コスト構造そのものを変え、ROIを成立させます。

センサーに関するお問い合わせは下記へ
株式会社リキッド・デザイン・システムズ
センサー共創ビジネス担当 info@liquiddesign.co.jp
製品仕様書:https://liquiddesign.co.jp/wp-content/uploads/2025/10/LDS-VitalSensor-spec.pdf

地震前兆検知への応用について

空気動圧センシングは、生体計測や空間センシングにとどまらず、地震に関連する微弱な環境変動の観測にも応用されています。建物内で観測されるごく小さな圧力変動や共振現象を捉えることで、地震発生前に現れる変化の把握を試みる技術であり、この考え方に基づく地震推定技術は特許第6995381号として成立しています。また、「地震破壊核形成信号の遠隔観測技術」として学会でも発表されています。当社ではこの技術を応用し、毎週地震予知に関する解析記事を公開しています。詳しくは以下をご覧ください。
https://liquiddesign.co.jp/category/blog/earthquake/